『ヨナっ、』
胸を抑え、荒い呼吸を繰り返しついに膝をついてしまったヨナ。慌ててかけよるハクは近くの木にヨナを移動させた。
フードを脱いだヨナは、何かを思うように目を瞑る。それとは反対に私は真っ青な空を見上げた。
◇◇◇
「陛下は武器はお嫌いなのでしょう?なら武器も持たずに人を護衛する世にも貴重な人間を探してくださいよ」
『あら、ハクは武器が無くったって十分に強いわ』
曲がり角、顔を出してハクやムンドク、陛下に手を振る。驚く3人をよそに、ニッコリと笑った。
「…ユンリ姫様」
『やめてよ、ハク。言ったでしょう、私は姫なんかじゃないの』
「何をおっしゃいます、ユンリ姫様」
『……ムンドクさんまで、やめてください』
私は、姫なんかじゃないの。この空気から逃げたくて私はまた、笑う。ハクに私からも護衛の件をお願いするが、上手くかわされ彼は何処かへ歩いて行ってしまった。
『…陛下、私ハクを説得してきます。ハクがヨナの護衛についてくれたら安全だわ!』
「あ、ユンリ!……ユンリ、君とヨナの護衛だよ」
早々に二人の元から立ち去った私は、陛下の呟きなど耳には届いていなかった―――
『いたいた、……ハク!』
まったく、足が速いんだから。追いつくだけで精一杯だ、こちらを振り向くハクの横に並び肩で息をする。
『……ハクは、ヨナが好きなんでしょう?』
「ッッ!!!な、何言ってやがんだ!」
『あら、違うの?好きだから、護衛に「姉様ッ!ハク!」…ふふ、噂をすれば』
可愛らしい声にそちらを振り向けば、必死に走ってくるヨナの姿。こちらに来るなり私に抱きつき、一緒にハクの後ろへと連れられる。
「隠して!」
『よ、ヨナ、どうしたの』
私の服を必死に掴むヨナの手。ゆっくりと背中を摩ってやり、ヨナが睨みつける方を私も見つめる。……あぁ、アレか。ヨナを探す一人の男の姿。確かヨナに何度か言い寄っていたのを止めたことがあり、その際何故か私にも言い寄ってくる男だ。
「…ダメですよ、ヨナ姫、イタズラはバレないようにしないと」
『あら、そうだったの?見つかってしまってはイタズラじゃあないわね』
「姉様まで!違うわよ!」
―――「は?ユンリを探してる?」
『……私、ですか』
その言葉にこくりと首を縦に振ったヨナ。詳しく聞けば、私に会わせてくれないかとしつこくヨナに迫っているらしい。それを聞いた私は文字通り頭を抱えた。
『何よ、それ。まったく意味がわからないわ』
「姉様が私を助けてくれたあの日からよ!」
「……まぁ、見る目はあるってことだな」
「どういうことよハク!もぅ、姉様が美人なのは分かるわ!でもこう何度も何度もしつこいのよ。ついでに私にも言い寄ってくるし」
「ふーん、言ってやればよいではないですか。私にはスウォンという心に決めた人が居ます、って」
ハクの言葉に顔を真っ赤にするヨナ。あらあら、なんてわかり易いの、可愛いなあ。にしても、ハクもバカねえ……自分からスウォンの名を出しておいて…。
「…俺の知ったことじゃねぇ」
「めんどくさそうに言わないで!あの人どうにかしなきゃ姉様にも迷惑がかかるわ!」
『…私は別に平気よ、ありがとヨナ』
「あんたの姉様もこう言ってんだ。テキトーにテジュン様と仲良くするんですね」
言い捨ててはヨナの元を去るハク。んん、どうしたものか……小さくスウォンならそんな事言わないのに、とヨナは想いを口にする。
『ヨナ、そんな事を言っては』
「だったらスウォン様に守ってくれと泣きつきゃいいだろうが!!」
『ハク!』
ああ、あー、ったくどっちも子供なんだから。大きく溜息を零しては、ヨナの頭を撫でて小さく耳打ちをした。
『……見つけた』
一つの部屋に顔を覗かせ目当ての後ろ姿を見つける。頭を下げるムンドクさんに慌てて頭を上げさせ、ハクのそばに腰を下ろした。
「…笑いにきたんですか」
『そうね、半分正解よ。あなたも案外子供らしいところがあるのね。妬くくらいなら最初から言っちゃダメよ』
「なんのことか、俺にはサッパリだ」
『どうせ、許してしまうわよ、貴方は』
素直じゃないんだから。撫でた頭は、サラサラでハクの匂いがした。何を言ったって結局ハクは優しいし、ヨナに弱いんだから。突如現れたヨナとハクのやり取りを見つめ、ほらねと呟いた。
「……なんのことか、サッパリだ」
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