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この湿気で茸でも生えたのかと思ったが、あいつは綺麗好きだからそれはないだろう。なら、どうしたという話だ。時刻は午後10時を過ぎ、警視庁に勤務する刑事、『荻野邦治』は元同僚である因幡洋の話を聞きながら、冷静に話の理解しようとしていた。夕方から降り続けている雨は今も止まず、数時間前よりかは雨足は弱まったが、依然として止む気配はない。
窓ガラスに映る自分の顔には薄っすらと隈が出来、疲れが見え隠れしていた。「聞いてるのか、荻!!!!」洋は涙声で必死に訴えかけているのか電話の向こうで鼻を啜るような音が聞こえた。
「どうしてそうなったんだ」
「知らねえよ!!!!家帰る途中に意識失って、気がついたら部屋のベッドに寝てて、なんか布団盛り上がってるから見たら、なめこだからで……っ」
「…………気付いたら?ちょっと待て、何があった」
思わず大きな声が出す。捜査資料を読んでいた部下達の視線がこちらに向く。数秒の沈黙。息を呑むような音が携帯を通して耳に届き、言葉を詰まらせたように洋の声が途絶えた。
「……………あいつが、いたんだ」電話の向こうの声は震えていた。思い出しているのだろうか。昔のことを。あいつの妹のことを。
「なんだか、騒がしいですね」
「お疲れ様です。因幡洋からの電話らしいですよ」
「因幡?……あの元”警察犬”のですか?」
珈琲入りましたよ。人数分のカップをデスクに置いて回る女性は最近本庁に配属になった
「なんでもありません。………少し煙草を吸ってきても良いですか?」
「あぁ。お前達も今日はもう休んでくれ」
「探し人は見つかりましたか」
背後から声がする。姿は見えないが
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