◎七雫目
東堂の様子が明らかにおかしい。
沈んでいるというかキノコ生えるくらい湿気てる。
マンガでよくあるどんよりした空気が見える気がするわ。
「なにあれキモいんだけどォ。」
「静かな尽八なんて尽八じゃないな。」
「東堂、何かあったのか。」
福ちゃん強いネ!
物怖じせずに聞けるのなんて福ちゃんくらいだよ!
オレ達は外から見物させてもらうね。
新開と2人で各々の作業をしながら聞き耳を立てる。
「あぁ、フク…。」
「元気が無いように見えた。何かあったのか?」
「…………人魚にはすでに王子様がいたのだよ。」
思わず新開と目を合わせる。
ハァ?!そりゃどういうことだ?!
人魚って名前チャンだろ?名前チャンの王子様って…。
「それは苗字のことか?」
「そうだ。苗字さんは………真波と付き合っていたのだ!」
あっの不思議チャン何しやがった!
タイミングが良いのか悪いのかちょうど部室に帰ってきた真波を捕まえる。
「おいテメェ。」
「なんか部室じめじめしてません?」
テメェのせいだよ!!
バシッと頭を叩くと頬膨らまして抗議する。今はそんな場合じゃねぇんだよバァカ!
新開とオレで真波を挟んで肩を組みコソッと話しかける。
「なぁおめさん。名前ちゃんと付き合ってるって本当か?」
「え、その話広まってるんですか?」
「マジなのか?!」
「マジなわけないじゃないですかー。東堂さんが勝手に勘違いして帰っちゃったんですー。オレ悪くありません!」
昨日じゃれて抱きついてたらそこをちょうど東堂に見られて、付き合ってるのかと聞かれたからちょっとからかってやろうとアイマイな返事をしたら誤解して、弁解も聞かずに走り去ってしまった。
「と、これで合ってるか。」
「わー荒北さんさすがー。」
「さすが靖友だな。オレは真波の言葉が理解できなかったぜ。」
そりゃあんな順序立てずにめちゃくちゃな話し方すればな…。
頑張ったオレ。
まぁ東堂の思い込みってことか。真波が悪いけど。
しゃあねぇな…。
東堂を呼び真波の頭を掴んで無理やり下げる。
「全部テメェの勘違いだよバァカチャン。」
「どういうことだ?」
「東堂さんごめんなさーい。
ちゃんとすぐ訂正しようと思ったんだけど東堂さんすぐ行っちゃったからー。」
「で、では苗字そんと真波は…。」
「あぁ、付き合ってないって。」
新開がバキュンと射抜くと東堂は膝から崩れた。
そして心底安心したといつもとは真逆の弱気な笑顔で笑った。
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