彼女でござる 花のJKでござる [4/7] 『望月さん。今、大丈夫ですか?』 『大丈夫・・・ってか敬語やめて(笑)お嬢様はお風呂?』 『うん☆(^―^)☆』 『じゃあ、電話する?』 『や、ごめん。万が一にも聞かれたら困るから(^―^;)』 『そっか』 花苗とのやり取りは、ラインやメールが多い。 花苗は寮でも万里小路さんと同室で、ほぼ丸一日一緒にいる。 花苗が言ってるように、お互いの主人に聞かれたくない話題も多いから。 学校でだけ一緒の私と晴臣とは違い、彼女たちは四六時中一緒にいるし。 別に万里小路さんや晴臣を邪険にしてるわけじゃなく、花苗とは同じ付き人として内々に相談し合えることも多いんだ。 口答では『御田さん』『望月さん』って苗字で呼び合う私たちだけど、二人切りの時やライン、メールだと『花苗』『晴陽』になる。 『今日も疲れたー。梨花(りんか)お嬢様と一緒にいられるのは嬉しいけど、やっぱ天然が過ぎると疲れるんだよね(汗)』 『お疲れー。晴臣様も一緒。あの人の猫のかぶり方は尋常じゃないからなあ』 私たちのやり取りはいつもこんな感じ。 多分、一般的な女子高生のやり取りとは全く違うと思う。 何しろ周りに普通の女の子がいないから、顔文字も絵文字も、流行りの言葉遣いも使う人がいないんだよね。 花苗は一応、顔文字や絵文字も使うけど、顔文字は多分、スマホに内蔵されているやつだ。 流行りの言葉遣いに関しても周りに使う人がいないから、当然、お互いに知らない。 私もそうだけど、花苗も忙しいからネットを見る時間なんてないだろうし、テレビすら滅多に見ないしね。 『お嬢様が・・・』 花苗の話題は万里小路さんのことが中心で、まあ、私も晴臣のことばかりだけど。 『お互いに辛いよねー』 実は、花苗は万里小路さんに道ならぬ恋をしていて、私が晴臣に恋をしてるのも二人だけしか知らない秘密だ。 『あ。ごめん。梨花お嬢様、お風呂から上がられたみたい。また明日ね』 『あ、うん。おやすみー』 どうやら万里小路さんが風呂から上がったみたいで、最後のメッセージは翌朝まで既読が着かなかった。 「あ。解んないとこ、花苗に聞けばよかった」 改めて授業でまだ使ったことがない教科書に向かいながら、そう独りごちる。 なんだか無性に晴臣の声が聞きたくなったけど、結局、晴臣に聞くのはやめにした。 ここは学校じゃないんだから……、自分にそう言い聞かせる。 学校では恋人同士かも知れないけど、家では所詮、主人と使用人だ。 「あー、もう。予習しとかなきゃ、絶対、授業に着いてけないしなあ……」 だけどもうそろそろ寝なきゃお肌に悪いし、朝、起きられない。 「仕方ない。続きは明日やろ」 毎朝一番に一時間、自習をするのが私の日課。 続きは明日やることにして、寝る前に軽くトレーニングして、お肌のお手入れも済ませ、ベッドに入る。 ふー。 お嬢様のふりってホント大変。 こうして女子高生としての記念すべき一日目の夜は、いつもと同じに更けていった。 [*前へ][次へ#] 5/8ページ [戻る] [TOPへ戻る] |