今日は久しぶりにご飯を食べようかな。 持たせてもらったお弁当は、きれいに並べられたサンドイッチだった。 サンドイッチ アカデミーでの午前授業を終えて、皆お楽しみ“昼休み”がやってきた。 私はいつものように一人、席を立ちあがると、がやがやと盛り上がる教室を抜けて、誰もいない外の広場へと足を延ばした。 そこは小さな区画だけれど、木と芝生で囲まれていて、ちょっとした死角になっている。 私はそこに辿り着くと、木陰に腰を降ろして持っていた包みを膝上で広げた。 ―――ぐぅぅぅきゅるるるるるるるぅぅぅッ。 「…」 突として木の上から降りて来た巨大な音。 来る前から誰かいるな、とは思っていたけれど。 まさか腹の鳴き声が聞こえてくるとは思わなかった。 しかも、その本人は焦ったのか、ぼとりと目の前に落下してきた。 その落ちてきた物体をじっと眺める。 すると、意外にも打たれ強かったそれは、さっと立ち上がると恥ずかしそうに目を右往左往させていた。 あ、この人は…。 「ななな、なんなんだってばよ!その眼は!あ、べべ別に俺はお前の弁当見たからって、腹が鳴った訳じゃねーんだからな?!勘違いすんなってばよ!!」 「…」 「だから、別に欲しいなとかなんてまーったく思ってなんかいねーんだからな?!わかったかよ?!」 ―――ぐぅぅぅきゅるるる。 「…」 「ぐ、ぬおおおおおおお!!」 どうやら、降臨した人間は、黄色い頭をした元気な少年だった。 一生懸命に言い訳をしては、そのお腹の声にあたふたしていた。 …お腹空いてるんだ。 あわあわと大慌てで、顔を真っ赤にしたり、怒ってみたり。 とても忙しいその少年。 私は静かにその場に立ち上がると、その少年の前にサンドイッチを差し出した。 「は?」 ぽかんとした表情が向けられる。 どうやら差し出された意味が解っていないみたい。 眼を一本の線にしながら、頭を左右に傾げていた。 「……これ」 「え?まさかこれを俺に?」 「…(こくり)」 「…いいのか?!」 どのみち私は食欲というものと乖離された状態にあるのだから、もともとお腹は空いていない。 それに、前の家でもギリギリ「食生活という営み」を保っていた状態にあっただけだったから、この里に来て以来は食事など、とんとご無沙汰だった。 今日はただ久しぶりに、周囲に合わせて食事をとってみようと思っただけ。 フ―ディンさんにわざわざ振る舞ってもらった料理だったけれど。 まあ、お腹が本当に空いている人に食べてもらった方が、食材も嬉しいと思うから。 だから、ナルトさん?だったかな?に食べてもらおうと思った。 「でもよ、コレお前が食べるんじゃなかったのか?」 「…(いい)」 首を横に振れば、怪訝そうな表情を浮かべるナルトさん。 けれど、お腹が減っていない旨を伝えると、彼は顔をほころばせて大いに喜んだ。 そして、遠慮なく彼の口に運び込まれていくサンドイッチ。 食べるの…早い。 「ありがとよ!そんじゃ遠慮なくいただきま―っス!!ってうんめェ――!!おい!これマジでうめーってばよ!!」 「…ん」 むしゃむしゃと食べる彼は、口横にパン屑をつけながら笑顔で喋り出す。 フ―ディンさんのごはんは美味だから。 私はそれにコクリ、と頷くと、彼は更に喜んだ風に笑顔を向けて来たのだった。 そして、食後にはなぜか、彼から盛大な自己紹介を受けたのだった。 (俺はうずまきナルト!よろしくってばよ!) (…ん) (お前ってば、さっきからあんま喋んねーのな) (…ん)