歯車は動き出した。 と、格好良く言ってみただけ。 歯車 「よ、はよ」 「…おはようございます」 「相変わらず堅ェな」 今日も今日とて、アカデミーに出席をすれば、今日の隣の席は犬塚さんではなかった。 声を掛けてくれた彼はどかりと私の席隣りに座ると、さっそく眠りについていた。 そういえば、以前に「お前ごちゃごちゃ言わねーな」と言われたことがあった。 たぶん、邪魔されないから楽なのかな、と思う。 「…」 ちらりと教室に目を移せば、視界に留まった犬塚さんが、こっちに気づいてニヤリと口角を上げてくれた。 私は、それにこくりと首を動かして返事をする。 そして、不意に顔を戻した時だった。 がらりと開けられた教室の扉。 そこから入ってきたのは、イルカ先生とぐるぐる巻きにされたナルトさん。 どうやらお説教が始まるらしい。 「どーしてお前は!」 「へーんだ」 今回のイタズラは火影岩にいたずら書きをしたとか何とか。 ナルトさんは、黒板の御前で堂々と叱られていた。 そうして、それを傍観宜しく決め込んでいれば、どうやらイルカ先生のお怒りのとばっちりが教室全体に向けられてしまったらしい。 いつの間にか起きていた隣の吾人が、「メンドくせー」と言いながらこうべを垂れていた。 そして始められたイルカ先生に変化する、変化のテスト。 順々に成功を収めていく生徒の中、ナルトさんは、期待を裏切らずに再び事を起こしていた。 すでにテストを終えた春野さんとうちはさんが、私の横を通り過ぎ様に呆れた言葉を漏らしていた。 そのときに、なぜかうちはさんと、パチリと視線が合ったような気がしたのは気のせいだと思う。 「おい、ルカ。ぼーっとしてんなよ、次お前だろ」 「…、はい」 「ったく」 ポンと奈良さんに押された背中。 私は変化の術を言われた通りにこなせば、元座っていた席に静かに戻って行った。 そして、全員のテストが終ったころ、先生から伝えられた爆弾発言。 ―――明日は卒業試験だ。 「…メンドくせーな」 「…」 その際に聞こえた隣からの声は、静かにだまって聞いておいた。 (試験何やんだってばよ?) (それは明日のお楽しみだ)