晴天の霹靂 01


俺がリールの家の事情を知ってしまってから2週間。暦は5月に入り、少し汗ばむ陽気の日も出てきた。

俺はといえば、リールとエミル副会長に対して何ができるのか?未だ答えを出せずにいた。
そんな状態でまかり通って来てしまったのは……エミル副会長が俺に会いに来る頻度がかなり減ったからである。
副会長が来ない時にはリールは俺と話しにやって来て、副会長が来る日には空気を読んだかのようにやって来ない。リールの神がかり的な空気読みスキルは、長年の経験によるものなのか。

アルバは、俺がエミル副会長と衝突した日以来なんだか優しい。
腫れ物に触るとかそういう居心地の悪い優しさではなく、さり気なく気遣ってくれたりだとか……そういった類の落ち着く優しさだ。

また、俺に続いてアルバも軍科からの推薦を貰い、軍科へ進むことは周りからも確実視されているようだ。

シュカとサーシャは特に変わりなくじゃれ合って過ごしている。話を聞くと2人はどちらも術科志望らしく話が合うようだ。

「サーシャちゃん、真面目だからすごいいろいろ知ってて参考になるんよー。こんないい子のサーシャちゃんを虐めてたヤツは馬鹿だね〜」
とはシュカの談。サーシャは照れてどもりながら言っていた。

「そ、そんなことないよ……僕はその、知識だけだし……シュカくんは柔軟で応用力あって、尊敬するよ」
「あー、嬉しいこと言ってくれるじゃーん。このこの」
ニンジン色の髪ぐしゃぐしゃヤメテー、のいつものパターン。そこでふとシュカが顔を上げて俺達に訊ねた。

「そーいえば、ノエとアルバは軍科に行くんでいいのー?リールは技科でしょー?」

「えっ?」「えっいや、俺は行くけどノエは知らん」
俺とアルバの返答がハモった。

「……え、まさか推薦蹴るの?」
シュカが信じられないといった表情で言った。……え、なにかまずいんだろうか。

特に隠すことでもなし(そもそも隠し事は得意ではないし)、俺は頭を掻きつつ答える。

「……いや、なんていうか。俺まだどこの分野に興味があるかって決まってないんだよ。だからこの1年でのんびり決めるつもりで……」

俺の答えを聞いたアルバが、やっぱりそんなノリかー、と頷きつつ付け加える。

「普通なら推薦蹴るのって結構な一大事なんだけど……こいつ多分、全学科から推薦貰うくらいの素質はあるだろうしな。複数推薦もらえばどっかは蹴ることになるわな」

シュカがはえー、と感嘆して言う。
「推薦蹴るのとか度胸あるなー。でもノエならもう何やらかしても驚かないよ」

……え、推薦蹴るのってやばいのか?困惑する俺が何に疑問を持っているのか察したらしいリールが補足してくれる。

「ノエ、推薦を蹴るってことは、アイドルの、サイン色紙を、数千人のファンの前で、破り捨てるのといっしょだよ」

…………。
そういえば、会長副会長って物凄い人気だったな。そういえば、推薦状貰う時『軍科会長の名において』とか言ってたな。そういえば、推薦状の下に会長の署名が書いてあったな。そういえば……。

「そういうことか……!は、はは……」

ようやく事態の重要性を理解して乾いた笑い声を上げていると、

「……あの、エトワールさま、じゃない、エトワールさん……」

俺に話しかけてくる何者かがいた。


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