02


「ノエは話が早くてありがたいな。大体同じ結論になったらしい」

俺の一言を聞いたアルバは満足げに笑って言った。

それはこっちの台詞である。
アルバはなんで今まで日陰者やってたんだ?ってくらいに頭が切れる。……ああ、親の身分か。全く、親の七光りほど害悪なものはないな。

さあ、話を戻そう。俺はシュカ、サーシャ、リールに向かって答える。

「俺が思うに……全面的な共闘、――つまりは一緒に行動することな――これはお互いに不利にしかならない。でも、完全に1人で行動することはこれまた不利にしかならない。」

3人はまだピンと来ない様子で固まっている。俺は続けた。

「全面的な共闘が不利になるのはさっき言った通り。完全な単独行動が不利になる理由は、……情報を得る手段がない、ってことだ。誰がどこでリタイアしたのか、どこにどんな罠が張られていたのか、今誰が残っているのか?何も分からずがむしゃらに逃げ続けるのって大変だし、精神的にもキツイ」

「確かにそうかも……じゃあ、どうすれば?」
サーシャが難しい顔で考え込んだ。

「俺達『逃げる側』に必要なのは情報を得る手段があり、自分の逃走にも差し障らない『部分的共闘』だよ。『ここにイザーク軍科会長がいたらしいぞ!』『さっきアルバの相方と会ったぞ!ここにいるぞ!』『このへんにちょっと強めの魔物がいるから接近には気をつけて』こんな情報があるだけでだいぶ違う」

シュカとサーシャは話の筋が読めてきて、少し希望が出てきたらしく嬉しそうにうんうんと頷いた。
……でもこの作戦、足りないものがあるんだよなあ。

「でもこの作戦、足りないものがあるんだ。俺じゃ手段を思いつけなかったんで皆に相談したい」

「なになにー?オレ達も考えるよ!」
元気の出てきたシュカの言葉。
「あ、お前もそこで詰まったか……」
アルバのため息。

「肝心の、リアルタイムで情報を交換する手段がない」

そう、この世界。
まだ無線機や電話がないのである。情報を交換する手段は専ら手紙なのだ。
かなり便利な魔化製品があるのに、こんな意外なところが後進的だったりする。
通信手段が思いつかないために困り果てているところなのだ。

「……なるほど。その問題、おれなら、なんとかできる……かも」

口を開いたのは、リールだった。


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