作戦会議。01


「質問はこんなもんか?当日は朝8時に教室に集合。ブレスレットを受け取って1時間かけて各々好きな場所に移動、9時から鬼ごっこ開始となる。鬼は9時ちょうどに総合棟入口から出て追跡を開始する」

なるほど。まあ一斉スタートでないだけ優しいといえるな。

「ああ、そうそう――」

説明の最後に付け加えられた先生の言葉は、生徒達をさらに色めき立たせることになった。

「このゲームは一応各学科の視察も兼ねてるとのことなんで、鬼とやりあった結果目に止まるようなことがあれば推薦も望めるな。まあ、なんだ。健闘を祈る」

ザ・大騒ぎ。
その日、俺の周りには共闘してくれと頼む人足が絶えなかった。
一存で即決するわけにもいかないし、俺自身もまだ作戦を考えてもいないので「考えさせてくれ」と断るほかなかったが。

……しかし、さて。
賞品にはそこまで興味はなくとも、実際それなりに楽しそうなイベントであることは確かなわけで。ある程度作戦を立てて全力で遊んでみるのもいいかもしれない。




その日の放課後。
いつものメンバーで集まって作戦会議をしているわけである。

「オレとしてはさー、ノエかアルバと一緒に行動したくてたまらないわけよ。心強すぎるしね。でもさ、実際それって作戦としてどーなの?」

シュカが机に肘をつきながらゆるい調子で問う。俺とアルバは顔を見合わせた。
複雑そうな表情に顰められた眉を見れば……どうやらアルバも俺と同意見であるらしい。
俺は口を開く。

「言いにくいけど……作戦として3人以上でかたまって行動するのは愚行だと思う」

俺の言葉を聞いてアルバも同意した。
「ノエも同じ結論になってたようで安心した。俺もそう思う。『相方』以外のやつと行動するのは止めた方がいい、と思う」

俺とアルバの言葉を聞くと、シュカやサーシャは明らかに気落ちした様子で肩を落とした。サーシャはしょんぼりと訊ねる。
「理由を聞いてもいいかな?」

うーむ、心が痛む。
でも断ることが結果として生存率を上げるのだからしょうがない。
隣を見れば、アルバも同じようなことを考えているのか見て取れた。俺はサーシャの肩に手を置いて答える。

「鬼の立場になって考えれば分かる。鬼としては、よりたくさんのペアを脱落させたいわけだろ?5人でかたまってたら1度の襲撃で最低3ペア、運が良ければ5ペア落とせるわけだ。……鬼からすればカモだろうし、そういう連中を序盤の狙い目にすると思う」

「俺達の誰かが『相方』になる確率なんて天文学的数字だろうしな。向こうからすりゃ5ペア落とせる公算が高い」

アルバが付け加え、シュカが確かになあ……と唸った。

……まあ俺は『天文学的確率を引く』ことにかけては多少自信があったりするのだが、それは今は置いておこう。

シュカとサーシャが肩を落としているところで、リールが控えめに発言した。

「でも、……じゃあ、ノエとアルバは、どうして今日、こうして集まった、の?作戦会議を、してるってことは、共闘の意思はある……んだよね?」

俺は頷いて答える。

「そう、そこだよ」


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