包み込んでくれるのは

「人の女に手を出そうとは、いい度胸してるじゃねぇか!覚悟は出来てんだろうなぁ!?」


「こ、こいつは…っ新選組の原田じゃねぇか!!」


「やべぇ…逃げろ…!!」


「おい待ちやがれ!!てめーら!!」


「…っさ、左之さん…もういいですからっ…!」






美月に絡んできた男どもを追いかけようとする左之を慌てて止める美月を振り払うこともできず…左之はこの場にとどまった。そしてすぐさま彼女のもとへと駆け寄り、抱き寄せた。





「…無事か!?何もされてねぇか?」


「…だ、大丈夫…です…少し、絡まれただけですから…」


「…馬鹿野郎、体震えてんじゃねぇか。なんでこんな時間に一人で外に出たりしたんだ!」


「…ご、ごめんなさい…」





大声で怒鳴るかのように言葉を発する左之に…顔を覆うかのように掌で隠し、俯く美月。そんな彼女の様子に左之は小さな溜息を零すと…先ほどよりも力を込めて彼女を抱きしめた。






「…左之さん…」


「怒鳴っちまって悪かった……美月に何かあったら俺の身も持たねぇんだよ…頼むから心配かけさせんなよ。どっか行くって言うんなら俺に一言告げてから行け。そうすれば俺も付いてってやれるから…」


「……っご、ごめんなさい…本当に、ごめんなさい…!…その、薬草が切れそうだったので近所の診療所におすそ分けしてもらいに行ったのですが…まさか私が浪士達に絡まれるだなんて思ってもいなくて……」





ぽろぽろと美月の瞳から頬へと涙を零れ落としながらも左之に縋りつく。小さな体は弱々しく震えていて、その姿が左之の胸をしめつけた。






「……怪我はしてねぇか…?」


「……はい…」


「…お前が、無事でよかった」


「…左之、さん……っ」


「…ん、どうした美月…」


「……助けに来てくださって、ありがとうございました…左之さんが助けに来てくれて…よかった…」





弱々しい力で、左之を抱き返せば…それ以上の力と心地よい温もりが美月を包み込んでくれたのだった。