君に恋することは必然だった
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  • 七人隊と半妖

    十数年前、七人で百人分の働きをするといわれるほどの圧倒的な戦力を誇った傭兵部隊がいた。その働きには一切情けをかけることなく、皆恐れをなしていた。
    この物語は、そんな彼らと共に過ごした一人の猫又の半妖との日常を描いたものである。









    「おい、千代はどこ行きやがった?」
    「ん〜、さっきまでその辺にいた気がしたけど、どうしたんだ?兄貴」
    「あの馬鹿…俺んところ来いって言いつけ忘れてやがる」
    「…あー、千代らしいっちゃらしいけどねぇ〜」




    千代なら縁側で日向ぼっこでもしてるんじゃねぇの?と告げる蛇骨の言葉に、蛮骨はその場所へと足を向ける。…案の定、その場所に千代は小さく丸まって眠っていた。






    「おい」
    「…すー」
    「…起きろ、馬鹿!」
    「ふにゃっ!?」





    気持ちよく寝ていたところを無理矢理首根っこ掴まれ、起こされたのは一匹の小さな猫又。猫又は最初驚愕の表情を浮かべたものの、叩き起こされたことで不機嫌な表情へと変えた。






    「…むー」
    「何怒ってんだ?お前が悪いんだろーが。こんなところで呑気に寝そべりやがって」
    「…だって、気持ち良かったんだもん」
    「俺の言いつけを忘れるくらいにな」
    「………あ!」





    蛮骨の言葉でようやく自分が彼の言いつけをすっぽかしたことを思い出した。






    「…あーうー…ごめんなさい…」
    「ハッ、いいぜ許してやるよ」
    「へっ!?」
    「その分の対価は体で払ってもらうからな」
    「や、やーん!!」





    黒い笑みを浮かべる蛮骨に、千代は顔色を真っ青にして逃れようとするが、非力な子猫又ではどうあっても七人隊の首領として力を誇る蛮骨に敵うはずがない。






    「おい、さっさと人の姿に戻れ。こちとら戦から戻ったばっかで暴れたりねーんだ。お前相手しろ」
    「ま、待ってよ蛮骨…!私が蛮骨のところへ行かずここで寝ちゃってたのも、あんま寝かせてもらえなかったからで…!第一まだこんなに明るいし、みんなまだ起きてるし!」
    「あー?俺が悪いって言うのか?最後は千代の方がいつも泣くほどせがんで…」
    「みゃーーー!!!」






    蛮骨の発言を、鳴き声で遮る千代。動揺からか蛮骨の思い通りに、猫又の姿から半妖の姿へ戻ってしまう。彼女の顔はまるで沸騰したかのように熱が集中し、真っ赤っかに染まっている。






    「…いじわる」
    「そんなの、とっくに知ってることだろうよ」







    羞恥から涙目になりながらも蛮骨を睨みつける千代の顔を満足気に見ながら、強引に彼女を抱きあげ、今仮住まいしている屋敷内へ連れて行く。







    「思う存分鳴いて、俺を楽しませろよ千代」






    千代に、抵抗のすべはなかった。