君に恋することは必然だった
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  • 蛮骨と酔っ払い猫又


    「ったく、お前は目を離した隙に何をするかわかんねぇな」
    「…みゃー…?」



    とろん、とした瞳で蛮骨を見上げる千代は、先ほどから変わらず酔っ払ったまま、猫又姿で蛮骨に全身ですりすり甘えまくっていた。




    「…ばんこつー…ばんこつぅー…!」
    「…タチ悪い」




    千代からほんのり漂うまたたびの香りに蛮骨は眉間に皺を寄せる。こんな姿を他の奴らにも見せていたのかと思うとムカムカ苛立ちが湧き上がってくるのだが、どうしてこうも苛立つのか自分のことなのによくわからない。…別に千代が他の奴にべったりしていたところで何ということもないはず…なのに、ダメだ。想像しただけでその男どもを脳内でぶっ殺していた。




    「千代、お前今後またたび禁止だ」
    「…どう、してぇ…?」
    「俺が気に食わない」




    傍から見れば傍若無人な言い分ではあるが、千代にとってはそれが全て。




    「みゃーい」




    何とも言えない、頼りない返事を返した。無論、蛮骨もそれを察したのか千代を凝視する。




    「…本当にわかったのかいまいち怪しいな」
    「みゃ…?」
    「お前、俺の言うこと忘れたらそれこそただじゃおかねーからな。覚悟しとけよ」




    酔っ払った千代に考える力など残ってなく、わけもわからないままこくり、と頷いた。




    「……ま、俺が傍にいるときなら許してやらねーこともねーよ」
    「…みゃっ…!」




    すりすり寄ってくる千代の顎を撫でながら呟いた蛮骨の言葉は千代に届いたか否かは定かではない。