肉食動物のような
「…寝、てる…?」
ある昼間の万事屋。ソファーで気持ち良さそうに寝ている神威の顔を覗き、確認する月白。
「ったく、んなとこで堂々と寝息立てながら寝やがって…営業妨害もいいとこだよ、こっちは」
はぁ、と呆れながら神威の様子を横目で見ている銀時。彼はいつもの特等席とも言える黒革の椅子へと腰掛けていた。
「…まぁ、普段はこんな呑気に出来ないからなぁ…」
銀時の言葉に苦笑しながら、月白はタオルケットを神威の上にそっと掛けてやった。
「何?海賊春雨って悪ィことばっかしてんのに、んなに忙しいワケ?」
「…まぁ、私たち第七師団だと戦闘のことばっかなんですけどね」
「へぇ…月白ちゃん、んな細ェ腕で戦えんのかよ」
細い…のかな?いや、そりゃ銀さんの腕と比べたら細いんだろうけど。
「い、一応……?」
「アバウトだな、おい」
情けない月白の返答に銀時はすかさず突っ込んだ。
…と、そのときだった。
「少なくとも旦那よりは強いんじゃない?何せ俺が育ててあげたんだからね」
寝ているはずの人物の声が、室内に響いた。
「だ、団長!?お、昼寝していたんじゃ……」
「狸寝入りして盗み聞きとは、悪趣味なこった」
「やだね、旦那。俺は話が聞こえたから耳を傾けただけに過ぎないさ。そんなことより、月白」
「は、はい…何ですか?」
「俺、お腹減っちゃったよ。」
「わかりました!それじゃ今すぐ準備を……」
…と、一旦この場を後にしようとした月白…だったが、ぐいっと腕を掴まれ、この場から離れることは許されなかった。
「その必要はないよ、月白」
ガシッと肩を掴まれ、後ろにはにっこり微笑む団長の姿。…あれ、なんだろ、嫌な予感がする。
「俺が今食べたいのは、月白だからね」
「っ!?い、いやぁぁぁ!?」
にっこりと微笑んでいる団長が、餓えた肉食動物にしか見えなかった。
その後、鉄拳を喰らわせ、何とか魔の手から逃げきった月白なのでした。
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