彼の狙い
「なんかさ、愛を感じられないよね」
「…は?」
いきなりワケわからない発言をする神威に月白は首を傾げた。
「俺に鉄拳食らわすとか、酷いよね」
「いやっそれは!…だ、団長が私に…変なことをするから……っ」
はぁ、とわざとらしい溜息を零す神威に月白は慌てて弁解をした。
「変なことって何?俺はただ月白とセック…」
「わぁーっわぁーっ!?」
神威の口から卑猥な言葉が出てきそうだったのを、月白は大声出して揉み消した。
「どうしたの月白?大声出しちゃって」
「だ、だからそれは団長が……っ」
「人のせいにするのはよくないよ。自分の非は認めないと」
「…うっ」
それはこっちの台詞だ、と言いそうになる月白だったが、何とか我慢した。
何言ったところで神威にかなわないことは嫌でも承知していることなのだから。
「だからさ、月白。俺と愛を育むためにも一発ヤッておこうよ?」
「わ、ワケわかんないですよっ!!なんでそこでや…ヤる…なんて……」
顔を真っ赤にし、恥ずかしそうに神威に反論する月白。どうして昼間から彼はそんなことを平然と言えるのだろうか…。
「考えてもみなよ月白。武に強い俺と太陽に強い月白との間に生まれる子だなんて最強じゃないか」
「う、生まれるぅ…っ!?」
そんなとこまで彼の想像は出来上がってしまっているのかと思うと、自分の身がいかに危険なのか瞬時に察することができる。
「そんなのと戦ってみたらと考えるとワクワクしない?」
「しませんよっ!!」
しかも結局戦うの!?ワクワクって、団長…自分の子を殺す気!?……って、つい団長のペースに呑み込まれてたけど。う、生まないから!
…そんな考えと同時に、月白の中でいつも何考えているのかわからない神威の心中が、読めた気がした。
「(…団長は、私の太陽に対する耐性に興味があるだけなんだ)」
普通の夜兎ではあり得ないこの耐性を、目的としてるんだ。
そう思い始めたら、悲しくなった。
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