連行される少女
「旦那、聞いてよ」
「何、お前の話聞いてろくなことないんだけど」
「月白がさ、冷たいんだって」
「そりゃ所構わず襲い掛かってくる上司がいりゃ嫌気さして冷たくもなるだろうよ」
「旦那、月白がそんな心狭い子なはずないでしょ。きっと女の子の日…」
「っ違います!」
勝手に話を捏造している神威に月白は背後から声を上げた。
「じゃあ何だって言うんだい?」
「……別に、何でもありません!」
「そんな膨れていると可愛くないよー?」
「…………」
プイっと神威から顔を逸らす月白。その様子がいつもと違うのは見てわかる。
「…あらら、本当にお前嫌われてらァ」
「うるさいよ旦那!」
「ぐはぁっ!?」
銀時の言葉が勘に障った神威はバキィッ…と銀時を容赦なくぶん殴った。…その後、銀時が気絶したのは言うまでもない。
「…団長が、悪いんだ…っ」
どこか万事屋に居づらく感じた月白は一人万事屋を飛び出し、歌舞伎町をブラブラ歩いていた。
確かに自分が変わっているのは自分自身よく理解している。戦闘種族で最強とも言える夜兎族の血と、人間の血を持っているのだから。
だが、その自分の血を目的とされたら…誰だって傷つく。
「……はぁ…もうやだな…」
憂鬱、という二文字を脳裏に浮かべ、はぁ…と溜息を零すしかない月白。
もうどうなってもいい、と自暴自棄になりながら町を歩いていたそのときだった。
…誰かとぶつかってしまった。
「あ…ごめんなさい…っ」
「いってぇな…何すんだよ、このアマァァァ!!どうしてくれんだよ、俺のアイスが地面に落っちまったじゃねーかァァ!!」
…運悪く、ぶつかった相手は柄が悪かった。それに月白の顔色はサァァ…と真っ青と化していった。
「あ、アイスはこちらで弁償しますんで…!!」
「んなもんで許せるわけねェだろ!?」
「えええっ」
じゃあどうしたら許してくれると言うのだろうか。月白は必死に頭を巡らせてみるが、いい案は浮かばない。
「…てめ、こっち来いやァァ!!」
「ちょ、や…やだ離して下さいっ!!」
腕を掴まれ、どこか連れ込まれそうになったので、月白は慌ててその男を振り払った。
…と言っても、彼女にも夜兎の血が流れているのでそこらの女の子と違って力の強さは半端なものではない。
軽々と男を遠い彼方へと吹き飛ばしてしまった。
しかし、そんなことも束の間。
「おいおい、俺の連れをどうしてくれんだよ!!」
「どっか吹き飛んで行っちまったじゃねェか!!」
「…どう落し前付けてもらおうか…!」
「……っそ、そんな……!」
どこから現れたのだろうか…大人数の男どもが月白の周りを囲んだ。
…いくらなんでもこの大人数では月白一人じゃ敵わないのは目に見えている。
「…こいつ、連れて行け!」
「気をつけろよ、何かわかんねェがこの女、すげぇ馬鹿力だ!!2、3人で押さえつけろ!」
「や…やだっ…やめてぇ!!」
否応が無しに月白は男どもに連行されてしまったのだった。
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