少年Aのひとり言


「んふー美味し〜あまーい!幸せ〜」
「顔、たるみすぎでさァ。」
「だって美味しいんだもんー」



総悟の奢りでチョコレートパフェを平らげている佐菜。これでもう5杯目だ。…その細い体のどこに入っていると言うのか…つくづく疑問に思う。




「なァ、佐菜」
「んー、なーに?」




パクリ、と最後の一口を堪能している佐菜。…とことんアホ面である。女の色気を欠片も感じさせない。





「オメー、好きな野郎とかいい加減出来ねェんですかィ?」
「!?ブハッ!!」
「うわ、汚ェ!何いきなり吐き出してんでさァ!バナナが飛びましたぜ」
「そっ総悟が、変なこと聞いてくるからでしょ!?」
「別に変なことじゃねェだろィ」
「あーもー!せっかくのパフェが勿体ないじゃんか!!」
「んなこと知ったこちゃねェでさァ。勝手に吐き出したのはそっちでィ」
「だっ、だから…!!そんな変なことをいきなり聞いてきた総悟が悪いの!だからもう1個奢ってよね!あ、すいませーん」
「……ったく、勝手な女でさァ」




こういう色恋の話にはめっぽう弱いことは、昔からの付き合いのためある程度は知っていたが、まさかここまで弱いとは。"好きな人"の言葉だけでバナナを吐き出すとかどれだけ初心なのか。






「……そ、そういう総悟は…どうなの?」
「何がでィ」
「だ、だから…!そういう…好きな子とか……」
「さぁねィ」
「ちょっ、何よそれ!人に聞いてきたくせに!!」
「いいからテメーは黙ってパフェでも食ってればいいんでさァ」
「…いきなり聞いてきたのはそっちじゃん、馬鹿」





ぶすっと不機嫌そうに口元をアヒル口にして尖らせながら、佐菜は新たに注文したチョコレートパフェを口に運んで行く。一口食べるだけでどれだけ幸せそうな表情を浮かべているのか……やはりこの女には色恋よりも食なんだろう。






「…あーあ、報われねェや」
「…?何が?」
「…別に何でもねェ、それより俺にも一口食べさせなせィ」
「ちょちょちょ!!なんでそこで大事に取っておいたチェリーを食べちゃうかなー!もう!!」
「いいじゃねェか、佐菜はさっきから馬鹿みてェにチェリー食ってたじゃねェかィ」
「…あ、あぁ…私の可愛いチェリーちゃんが…!!」



チェリー一つにガタガタうるさく騒ぐ目の前の大食い女に惚れちまった俺は、頭がおかしいのかもしれねェや。


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