▼ Uno studio di ciascuno.
side.Police
頼んでいた調べ物についての報告が風見から届いたのは、つい先ほどのこと。
それに目を通せば、そこには簡易的なものが書かれていた。
並盛中学を卒業後、並盛高校に進学。
高校を卒業してからはイタリアへ向かったらしく、そこで経歴は消えている。
けれど彼の周りには、どうにもイタリアンマフィアが関わっているらしかった。
イタリアでの動向も調べたところ、ボンゴレファミリーと言うマフィアと関わりを深く持っているらしく、そのマフィアの一員であることが疑われる。
他に詳しくは載っておらず、ここまでいろいろと隠されているとなれば、ますます彼がマフィアの一員という線は濃厚なものだと思わされた。
俺が風見に調べてもらった人物。
それは、そう。
毛利探偵の家に住まわせてもらっているコナンくんを筆頭とした子どもたち、少年探偵団と親しい如月雄魔だ。
あまり深く探るな、関わってくるな、と醸し出されるオーラは見るからに普通の人嫌いとはまた別物。
ましてや子どもたちに好かれ、それも無下にしないところを見ると、彼が人嫌いだとは到底思えなかった。
「正体は不明なまま、か…。」
いろいろと不可解だった。
自分で言うのもアレだが、探偵だけが仕事であれば危険なものや依頼人がよっぽどの金持ちでなければ、あんな高価そうなスーツなんて何着も持たない。
さらに、以前偶然見掛けた車だって決して安くはなく、維持費諸々を考えてもただの探偵が乗れるものではなかった。
もし乗れるのであれば、今頃毛利探偵もレンタカーではなく、自身の車を所持しているところだろう。
けれどもし、彼が本当にイタリアンマフィアだったとしたら。
立場によってはそれさえも、可能なことなのかもしれない。
彼が米花町へ来る前まではイタリアに住んでいたこと自体は彼の口から訊かされていたし、風見による調べでイタリアに居たことの裏付けは出来た。
でも、だからと言って彼がマフィアの一員であることに裏付けが出来たわけではなく、ただその線が濃厚である、というだけのことに過ぎない。
「…なんにせよ、この日本の治安を脅かすようであれば容赦はしない。」
彼が一般市民であろうがなかろうが、マフィアであろうがなかろうが、この日本の治安を脅かさず、なおかつ邪魔立てをしないのであればそれで構わない。
何かあれば日本での出来事は日本の警察が主導権を握ることだって可能なのだ、困ることは今のところなかった。
けれどやはり、どうにもピンとこない。
いろいろと理解出来、辻褄が合うことももちろん多いのだが、それよりもあの適当さ満載油断しまくり、と言えそうな彼がマフィアと言うのが信じ難いのだ。
あれが演技であれば話しは変わるが、あの様子を見る限りでは演技ではない。
もし演技であったなら、それこそマカデミーものだろう。
マフィアと言うものがどんなものか、と言うのはそれとなく予想はついている。
その土地を愛し、故に犯罪に手を染めるマフィアがいることも、ただ面白おかしく殺戮などの犯罪に手を出すマフィアがいることくらいは知っていた。
彼が関わる"ボンゴレ"というマフィアがどの部類かは知らないけれど、もし仮に彼がマフィアだったとしたら…。
「わざわざ日本に来た理由は…？」
そう口にして、ふと思い出す。
組織が手を貸してもらっているマフィアが居る、と以前ベルモットからそれとなく聞き出したことがある。
ひとつはFBIにも目を付けられているようなマフィアで、流したはず。
それから、あとふたつ。
どれも闇の中で組織を存続させるためには必要なもので、秘密裏に動くことが可能なマフィアとなれば、組織が手を組まないはずもないと思った。
これは予想に過ぎない。
だけどもし、彼の狙いがそれに関わるマフィアたちだとしたら…？
組織のことをどう考えているか、そのマフィアをどうするのか、そこは予想も立てるのが難しい部分ではある。
「…いや、確かベルツリー急行で…。」
ああ、今日は頭の回転がいつもより早いのかもしれない。
さらに思い出したのは、組織で作られる毒薬に使われる成分を持つ薬をとあるマフィアと取引をしており、それがベルツリー急行で行われるはずだったがそこには人間ではなく血痕しかなかったので事実上破断されていた、と聞いている。
そしてあの列車には、彼もちょうど乗り合わせていた。
どう動くかは解らないが、どうやら敵の可能性は低そうだ。
結局あの血痕もほぼ綺麗に消され、ほんの僅かに残された血痕で一瞬騒ぎになったものの従業員の怪我、ということで終わりにさせられたと報告されている。
…まあ、なんにせよ、気に掛けていた方が良さそうな人間ではある。
どんな状況から敵になるか解らない、謎に包まれた組織(マフィア)と関わる彼のことはこれからも見張ることにするか。
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