■ 囚われの数日間について 4

「もういっぱいいっぱいなので、あんまり激しくしないでくださいね」

 当然そんな懇願は聞き入れられることはなく、絶え間なく与えられる快楽に散々に啼かされた。
 あんな言い方をするから、てっきり突っ込んで一方的に腰を振って終わるのか思っていたら、とんでもない。意外なことに非常に丁寧に丁寧に抱かれ啼かされ、おかげで快楽の余韻と言えば聞こえはいいが、要は全身を襲う疲労感が半端ない。むしろ、三人同時の最初とは異なり、ゲンスルーのペースでひたすらにねちっこく責められるから最悪で最高だった。
 だからそう。乾いた喉を潤した後、間髪を容れず倒れるように眠ってしまったとしても、それは全く不自然なことではない。


  ***


「おい、なまえ?」
「あちゃー。完璧寝てるぞ」
「これ一枚じゃ風邪ひくだろうしな。よし、そっちへ寝かすか」

 おう、と応えたサブがベッドの一角を整えれば、バラがバスローブごとなまえを抱き上げてゆっくりと横たえる。ふわふわの掛布団が心地よいのか、もぞもぞと潜り込んで丸まる女のあどけない姿に、自然と二人の頬が緩む。

「なぁ、ゲン。こいつって実は金とかカードで雇った女じゃねぇのか?」
 サブの問いに、オレも気になっていたとバラが同意を示す。
「んな無駄なことするわけねぇだろ。今までのと同じ、ただの暇つぶしだよ」
「……そうは言うがな、それにしては、調子が違い過ぎるっつーか」
「そうそう。なんか……なあ。お前も感じただろう?」
 お前にしちゃ珍しく優しかったしなぁとサブが揶揄すれば、心外だとゲンスルーは声を上げた。
「そりゃ、お前らにつられたんだよ」
 それに、あんな反応をされては仕方がないだろう、ということまでは思っても口には出さない。怯え嘆くのが当然の立場にもかかわらず、あんなふうに求め、甘い声で乱れるような女だ。むしろ、女の正気を疑うべきだ。最中の事を冷静に思い出したゲンスルーは、こりゃ……不味い女に手を出したか?と眉を顰めた。
 しかし、仮になまえの頭がいかれていても、別段問題は生じないのだと思い至る。正気だろうと狂っていようと、穴のある女という生きものである事には変わりない。どうせ、ヤるだけだ。それに、弱者を……つまり泣き叫ぶ女を踏み躙るのもいいが、快楽に絶え絶えになる女の姿というのも、なかなかに愉快だった。

 そして何より、こいつらが楽しそうだったのがいい。新しいおもちゃを気に入ったらしい二人を見てゲンスルーは思う。

 バラはまあ、割と何でもいけるから気にしないとしても、サブがこうも気に入る女というものはなかなか珍しい。いつもなんだかんだと加わってはいるものの、虐げて壊して、最終的には突っ込む穴さえあれば事足りるという自分たちのようにはいかない性癖だ。行為そのものを楽しむというよりは、三人でする悪さを楽しむサブに、ゲンスルーとて思うことが無かったわけではないのだ。
 そのサブが、この女を相手にして本当に楽しそうにしていた。ただ、その相手が陵辱者相手に自分から進んで乳房を差し出し、かけられたと喜ぶような女なのは心底どうかと思うが。
 なんてことを考えるうちに、与えれば与えるだけ素直に享受し、とろとろにした穴できゅっきゅっと締め上げるなまえの痴態までもを鮮明に思い出してしまう。薄ぼんやりと形に成りかけていた何だかやっかいな感覚を、体よく劣情で覆い隠したゲンスルーは目下の事態に焦点を合わせた。

「よし。とりあえず、あいつを起こしてもう一回やるか」
「ば……! 馬鹿かお前は! とりあえず飯か風呂だろうが!」
「そうだなー。オレもサブに賛成だな。さすがに腹が減ったし……さーて、何食うかなー」


  ***


 ルームサービスをどうするかについてワイワイと騒いでいる三人の声を背に受けて、私は考えていた。
 さて、せっかくこうして狸寝入りで耳を澄ませていたものの、肝心の爆弾に関しての情報は何もなく、各々の能力についても不明なままだ。まあ、現状がそう悲観するようなものでないことだけはわかったので及第点というところか。
 ……まあ、いいや。とりあえず、起きたらご飯が食べられるのは嬉しい。私だって、さすがに、そろそろ何か食べたいし。もう少し待ってから起きようか。それとも今、声で目覚めたふうを装うか。少し考えてみたものの、どうもまだまだ決まることが無さそうな彼らの声を聞いて、今しばらくは寝たふりを続けることに決めた。



(2014.01.12)
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