トン これセンパイの身体がキッチンの奥の壁につく音ね。
つまりセンパイはこれ以上下がれない。おれはあと3歩近づけるけど。

いち



さん

「近い」
「そうですね」
「ちょっと下がって」
「嫌です」

ゼロ距離が鼻がぶつかる距離だとしたらいまは0.3距離くらいかな。身体はゼロと捉えて差し支えないほど密着しているけど。おれは背が低いわけではないが、センパイほど高くない。その分の差をおよそ0.3と適当に仮定。わかりきっていたことだけど、センパイはアップに耐えられる顔だな、毛穴一つない。近づけば近づくほどかっこよ……むぐぉ

「ふぇんはい、ふぁにふぅんでふか(センパイ、何するんですか)」
「近えっつってんだろコラ。ゆっくり背伸びすんな」

ハッ。無意識に背伸びまでしていたらしいいつのまにか0.1距離になっている。そんな俺の顔をセンパイの手のひらが覆っている。おかしいな、センパイのイケメンアップをいつでも見れるように、俺自身アップに耐えられる顔面にむけて日々精進していたのに。センパイのために。
余談だが、センパイは指まで美形だ。

「…ちょっと落ち着け」
「おふぃふいふぇはふ(落ち着いてます)」

俺の顔面を抑えていない方の手で、肩を抑えられた。優しく込められたセンパイの力と重力に従ってセンパイとの距離が0.3に戻される。

「はあ…
お前、おれとキスしたいの?」
「…………………ふ?」