※GS3rdのメンバーをアイドルグループとして設定してます!ご注意!














メリークリスマス、メリークリスマス。


どこに言ってもその言葉とともに笑顔を向けられる。


冗談じゃない。何がメリークリスマスだ。


僕はクリスマスが、大嫌いだ。







「ピリピリしてんねー、瑞樹くんー」

「そりゃそうだろ。ナマだからお前や湊が何かぶっ飛んだこと言わないかどうか、気ぃ遣わなきゃなんねーからな」

「なにそれ!ヒドイ!俺そんな変なこと言う!?」

「毎年なんかやらかしてる。去年はアイドルとニーナが飯食いに行ってるの見たとか言って…」

「あーれーはーさー!ニーナが悪いよね!?俺の顔見てヤベって顔したんだもん!」


楽屋で盛り上がるのは僕以外のメンバーだ。

僕は楽屋中央のソファセット、上座のソファに座って、楽屋に入ってからずっと貧乏ゆすりをしている。落ち着かない。今年は何が起きるだろうかと。


司会者はベテランのお笑い芸人さんで、僕らしかゲストはいない。あんまりにもあんまりな内容を口走ると、スイッチを押せばジングルベルの曲が流れて視聴者には聞こえない仕掛けになっている。

でも、スタジオにはダダ漏れだ。

去年のニーナのスキャンダルを湊が図らずも暴露したときは、心臓が口から飛び出てそのまま死ぬかと思った。顔面蒼白になってたのは見学していた夏さんも同じだ。

ちなみに、そのとき大慌てでジングルベルの歌のスイッチを押したのは僕だ。


「でもなつさんも言ってたよ、ほどほどならスキャンダルバラしてもいいって」

「程度によるんだよ!同じ系列事務所のアイドルのスキャンダルバラしてどうすんの!ニーナがかわいそう!」

「まぁいいんじゃねぇの、あいつそのせいでしばらく大人しくなったらしいし」

「スキャンダルバラされても大人しくしないのはお前くらいだよ、陣」


好き勝手に喋る僕以外の四人。

本当に頭が痛い。


「頼むから今年は大人しくしててよ、湊…」


もはや懇願に近い。

僕の言葉が聞こえたのか、湊は「任せて!」と笑顔で頷いたけど、それを横目に陣がニヤニヤと笑っている。

これは全く当てにならない証拠だ。

湊の「任せて」は「よく分かっていません」とほぼ同義だ。





ーーーーコンコン、


「BUCKSさん、カメラテスト準備できましたー。お願いしますー」

ドアをノックしたのはADさんだ。

今日は夏さんは3rdの生放送音楽特番につきっきりで、僕らのスタジオには来ない。


子守は僕の責任だ。


「んじゃ、行きますかー!」

「今日のネクタイだっさくないー?俺これヤダー!」

「馬子にもなんとかだな。よく似合ってんぞ」

「大丈夫か?瑞樹。顔色が」

「悪いんだよね、うん、分かってる…」


スタジオに行くまでの廊下で、すれ違うスタッフに笑顔で挨拶をする。


僕は今、毎年のクリスマスのこの生放送が死ぬほど嫌いだと叫びたい気分だ。

もうホント、生放送中、緊張がずっと続くんだ。だから、生放送が死ぬほど死ぬほど死ぬほど、大嫌いだ。


「今日はオープニングで、メリークリスマスの一言、お願いしますね」


女性スタッフに笑顔でお願いされる。


「分かりました……」


僕は上手に笑えていただろうか。



「……ひきつってるぞ、瑞樹」



やっぱりか。



亮介に耳打ちされて、肩を落とした。

でも、地獄の本番はこれからだ。


「よろしくお願いしまーす」

「しゃーす!」

「お願いします」


スタジオに入る。

セットが目に入る。クリスマス一色の赤を基調としたセットだ。クリスマスツリーが眩しい。

笑顔を浮かべてセットに入る。

全員着席する。

その途端だった。



「そういえばさー、琥一って最近カノジョできたらしいよ。一般の子らしいよ」

「(湊!!!)」

「あ、ごめん。アハハ」


スタッフ勢揃いのスタジオで大きな声で湊がそう言うもんだから、僕は小声でそれを制した。


これが生放送中、ずっっっっっと続く。


何度も言おう。

何がメリークリスマスだ。

何がジングルベルだ。



僕はクリスマスが、この生放送が!!


(大嫌いだ!!)






【anti-merry christmas 】












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