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またこの人を置いて行ったよ。




どうしてコナンくんはこの人を置いていくのだろうか、拾ったものはちゃんと自分で責任取りなさいって言われなかったのか、コナンくんや。私は君のお母さんでもなければ責任者でもないわけだから君が置いて行ったものに責任を取らなくても良いはずだが・・・。




「誄。」




「はい?」




「お前に渡したいものがある、少し待っていてもらえないか?」




「・・・はい、私今外に出られないのでここにずっと居ますが。」




コナンくんが出て行ったドアと同じドアから外に出る赤井さんを目で追って、リビングのソファに腰掛けてから何分経っただろうか。なかなか帰ってこない赤井さんを待つのは少し寂しい。ここに帰ってくるとわかっているのにも関わらず彼は本当にここに戻ってくるのだろうか、そんなことをフっと考えてしまうことがある。




ここに来る間に交通事故に当てはいないだろうか、ここに来る間にFBIの仕事で出かけることになって怪我をしてはいないだろうか。




彼は本当にここに戻って来てくれるのだろうか。




ガチャッ




彼が帰ってくるというから鍵をかけていなかったドアから音がした。靴を脱ぐ音がする、こちらに向かって歩いてくる音がする。彼の足音がする。




「おかえりな、さい。」




帰ってきた彼の姿に驚愕した。彼の姿にというか彼の持ってる花束に驚愕した。いつぞや見た光景だ。あれはそう、私が軽い入院した時。




「なんですかそれ。」




「花束だ。」




見たらわかりますよ。質問を変えればよかったのか。「それは造花ですか?生花ですか?」的な感じだろうか。さすがにどんなに疎い人でも「それはバズーカですか?」と花束を見て聞く人はいないだろう。




赤井さんから言わせれば私はその後者にはいるのだろうか・・・悲しい。




「どうしたんですか、それは。」




「お前にだ。」




「私に?なんで?」




赤井さんは花束を持ってソファに座る私の前に跪いた。




これはどこかの赤井さんファンが見たら目から血が出るような光景なのだろう。向こうの私の友達とか、友達とか、友達とか。




「誄。」




「はい。」




「そう身構えるな、捕って食ったりはしない。」




声は笑っているが顔が笑っていない。私がここで警戒心を解こうものならその猟犬の牙を私の首筋にあてがって食い込ませて、そこから滴り出る血液を舐めとってしまいそうな顔でこちらを見ている赤井さんと顔をあわせるなんてどんな公安警察でもできないだろう。私はできない。今だけはコナン君に助けを求めたい。助けて高校生探偵、私明日の朝日を拝めないかもしれない。




「もう一度言う、俺はお前が好きだ。」




「は?」




猟犬の牙を研ぎに解いて私に見せつけていた赤井さんの口から放たれた言葉に私は顔の硬直を解くこともままならず、素っ頓狂な返事を赤井さんの告白に返したのは良いのだが、その後の赤井さんの顔を見られない。




「聞いていなかったのか?」




「聞いてました、けど。なんでこの後にを及んで。」




「待たされ続けるのは性に合わないと気がついたのでな。」


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