「私の部屋?」
「そう!この間みんなの部屋見終わったんだけど、部屋王は砂藤だったよ!」
「待って全然話が見えない」

ロビーでルームウェアは首回りが開いてる方がいいとか、あそこのブランドは可愛いとかの話をしていたら、思い出したように三奈は立ち上がった。そのままふんふんと腕を振りながら説明してくれたが、言葉が足りなさ過ぎて全く分からなかった。なんだ部屋王って。疑問符を浮かべていると一緒にいた響香が補足してくれ、漸く意味が分かった。この前A組の男女の部屋を見て(何人か見せてないらしいけど)部屋王という一番素敵な部屋の持ち主を決めたらしい。そのとき私は外していたので、この機会にとのことだった。まぁ、いっか。

「いいよ。でも皆の部屋も後で見せてね」
「オッケー!あっ、透とかも呼んでくるから待ってて!」
「じゃあ先に部屋の前いるね」
「りょーかい!」

返事をするや否や皆を呼びに行く三奈を響香と見送る。相変わらず早いなぁ…

「でも前のアパートと殆ど変わってないかも。結構狭くなったけど」
「中々名前の部屋広かったしね」
「けど猫いるんでしょ?」
「勿論。家族ですから」

そんな雑談をしながら私の部屋の前に着く。なぜか私は女子で一人だけ2階だ。寂しい。するとエレベーターが到着した音が聞こえた。手を振る梅雨ちゃんやお茶子、百の向こうにはぞろぞろと男子が顔をのぞかせていた。

「わ、なんか沢山いる」
「女子の部屋って聞いてオイラが来ねぇ訳ねぇだろ」
「流石だね峰田くん…」

女子だけかと思っていたら男子も数名参加していた。たまたまエレベーターで会ったらしい。じゅるりと嫌な音を立てる峰田くんの他に上鳴とか瀬呂くん、轟くんもいた。何となくこういうの参加しないかと思っていたから少しだけ驚いた。それをそのまま本人に伝えれば、そうか?と首を傾げられてしまう。

「つーか俺の部屋見たんだし俺も見ていいだろ」
「いやまぁいいけど。ご馳走様でした」
「えっ待って!この間は名前いなかったのに何で轟くんの部屋入ってんの?!」
「ご馳走様ってなんだ!オメー轟食ったのか?!」
「うるさいっ」

ごん、と透と峰田くんの頭を軽く叩く。二人は小さくブーブーと不満を漏らしていたが、事の顛末を伝えると納得したのか何も言わなくなった。ただラムネ貰った…というより話聞いてもらっただけだけど。
何んとなく息を整えてからじゃあ早速とガチャリと鍵を開けた。

「どーぞ」
「わーい!」

遠慮なく入っていく三奈に女子が続き、男子もお邪魔しまーすと慣れた様子で入っていった。もう少し照れるかと思ってたけど、最早数人の部屋に訪れた男子たちは免疫が付いているらしい。つまらない。もっと照れろよ。

「猫ちゃん!久々やねぇ〜」
「片付いてんなぁ…」
「前の部屋より手狭だから荷物多いけどね…」
「名前ってシンプル派なんだな。尾白と一緒」
「何その派閥」
「俺とか耳郎とか緑谷はガチャガチャ派」
「一緒にすんなし」
「緑谷くんは、オールマイトのポスター貼ってそう」
「えっ、何で分かったの?!」
「あはは、予想的中?」
「デクくんの部屋はね、すごいよ!」

そんな会話をしていると思っていたよりも静かな峰田くんに目が行く。何を見つめているのかと思えば、隅にある衣装ケースだった。透明なそれは目隠しをしているものの下着類が詰まっている。分かっているのか勘なのか、はぁはぁと息を荒げながら手を伸ばす彼に2度目の手刀をお見舞いする。やっぱりか、君。

「何すんだよ!!」
「いや怒るだろフツー」
「男のロマンだろ!」
「その行為は漢じゃねーだろ」

こらこらと宥めてくれる切島くんに免じて今回は許してあげる。そして話題は切島くんの部屋は漢くさいとか、瀬呂くんの部屋はアジアンテイストとか、わいわいと盛り上がっていった。
その間も峰田くんは見ても減らねーだろと文句を言っている。まぁ過去に一度峰田君には下着姿見られているんだけど。あ、思い出したらなんかまた悔しい。いてーと頭を押さえる峰田くんに近づきながら低い身長の彼の目線に合わせて少しだけしゃがみ、こっそりと声をかける。

「峰田くん」
「なんだよ」
「この前見られた下着、覚えてる?」
「あの薄い黄色と白のレースのだろ?当たり前じゃねーか。何度お世話になっ…」
「それね、」


今も着けてるよ?



前かがみになった私の部屋着は冒頭話した通り、首回りが開いているタイプで。その奥には彼が以前みたあのブラがきっと僅かに見えている。そして慎ましやかな谷間も。ぎんっと目を見開きながら後ろに倒れていった峰田くん。その音にみんなが振り向くなか、私も今気づいた、驚いたって顔をする。ふふ、ずるいかな。けど、今度は私の先勝ということで。



           


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