あ、これ、緑谷くんのだ。

放課後、なんとなく教室に残って課題をしていたのが5分前まで。それから暗くなってきた空に焦って片付けをし始めたのが3分前。で、緑谷くんの机の脇を通った時に床に落ちている黒焦げのノートを見つけたのが、いま。

中身を見るなんてことは小心者の私には出来なくて、寮に持って行ってあげようと自分の鞄に仕舞いこんで、教室を出た。


「という訳でした」
「あぁあ、ありがとう!無くしたかと思って焦ってて」
「ふふ、どういたしまして」
「今度何かお礼するよ……って、あ、そういう意味とかじゃなくて!ほら、掃除当番とか!!」
「そんな焦んなくても……」


わたわたと手を振る緑谷くんに、なんだかこちらが申し訳ない気持ちになる。それでも、何かあれば!と食い下がる彼に私は1つだけお願いをした。


「ちょっと、濃い話しようよ」



場所は変わって、ハイツアライアンスの1回共同スペース。皆は寝る前は部屋でゆっくりするから、この時間だけ誰もいなくなるのだ。


「うーん、やっぱり初動は情報量で変わってくるよね」
「そうなると障子くんは欲しいね…」


次の実践訓練で行われるグループ戦闘の際のチーム分けについて、私達は想定に想定を重ねている。まぁ私と緑谷くんが同じチームになるかは分からないんだけども。この人が敵だったら、味方だったら。そんなふうに考えていざという時にすぐ動けるようにしたいのだ。

「もし障子くんが敵だったら?」
「響香とか甲田くんに妨害してもらうとか。百にスピーカーとか作ってもらうのも有りかも」
「そうか。聴覚による情報収集の妨害……けど、三人の場所を相手に知らせることにならないかな」
「それはそれで囮に使えるよ。けど3人共障子くんと同じチームで敵だったらやばいね」
「確かに……ってか、僕も大概だけど名前さんこういうの分析するの好きなの?」
「好きだよー。先生方相手に戦うとしたらとか考えるもん。てか転校してきてプロヒーローの多さにびっくりしてるのに、みんな普通に接するし…!!」

田舎出身には実は中々刺激が強かったのだけど、みんな普通に振る舞うもんだから驚いた。流石雄英って内心思っていたし。

「そうなんだ……えっと、先生相手にって…例えば?」
「んー、相澤先生なら、長期戦に持ち込めるよう遠距離組が間おいて攻撃するとか。密集すると一気に個性消されちゃうし。ミッドナイト先生の個性なら女子には効果薄いから、そこは利用するかなぁ。あとは、吸わない息しない」
「意外と脳筋だね……」
「ふふふ。緑谷くんはオールマイトと戦ったりもしたじゃん?どうやったの?」
「あの時はかっちゃんいたから勝てたからなぁ…」
「一対一だったらオールマイトは勝てない気がする…パワー型ってシンプルで強いよね」
「そ、そうだね…。えっと、名前さんって他に相性悪い個性いるの?」
「んー、やっぱ切島くんとかかなぁ?緑谷くんは……爆豪?」
「かっちやんは天敵っていうか…」

自分たちの話とかほかの皆の話をしていたら、夢中になりすぎて背後の気配に気が付かなかった。

「おい、いつまで起きてる。消灯だぞ」
「わっ、相澤先生」
「すっ、すみません!!」


話しているうちに、いつの間にか消灯ぎりぎりになってしまっていた。緑谷くんとノートを片付けながら「またやりたいね」って話しながら、笑った。






           


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