2XXX年。
現代。
「今日から回収課に配属されたマリアです」
堅物そうな死神が紹介する。
チャラそうな死神とオカマな死神が居た。
私は自分から命を棄てた。
それで“終わり”だと思ったのにどうやらこの世界では「死神」になるらしい。
気付いたら眼鏡を作られて試験を受けて此所に居た。
死神は永遠に人の魂を狩る。
「ちょっとグレル先輩!!」
私は笑って居た。
生きてる時は辛い事ばかりで笑った事なんか後半はなかった。
人間だった時の恋人とは辛く毎日泣いた記憶しかない。
それなのに
気付いたらグレル先輩の前ではゲラゲラと笑っていた。
昔の恋人のせいで男性は苦手だったのに。
いや、グレル先輩はレディだからかな…?
わりと面倒見がよくてハッキリ物事を言うグレル先輩にいつしか私は恋をして居た。
何故かグレル先輩は仕事を抜け出してウィリアム先輩に叱られたり、休暇を取る日があった。
11月9日。
またその日がやってくる。
私はグレル先輩のあとを付けた。
路地裏に着くとグレルはリコリスの花束を置いた。
「グレル先輩…!」
「アンタ!」
「私、毎年この日になるとグレル先輩がどこかに行くのが気になって!」
10年、グレル先輩、貴方を見てきた。
ボロボロのコートらしき物をグレル先輩は毎年その日に持っている。
「そのボロボロの布は?」
「アンタには関係ないでショ」
「関係あります。もう10年も一緒なんですから」
「仕方ないワネ」
何千年も前の話。
あるオカマがある人間のオンナを殺めた。
理由があった。
そのオンナはどんどん墜ちてやがて自分を棄ててしまうから。
そして好きになった男や、たったひとつの残された繋がりにずっと苦しむオンナを見たくはなくて、オカマの手で終わらせた。
ボロボロの布はオンナが着ていたコートだったらしい。
「…好きだったんですか?」
「わからないワネ。アタシとマダムレッドは同じだと思った。けどわからない。女として好きなのか、男として好きなのか」
何千年経っても
友達として好きだったのか、恋愛感情で好きだったのかは分からないらしい。
「マダムレッドがアタシを歓迎してくれてネ、ワインを二人で飲んだのヨ。本当に楽しかった。まだハッキリ覚えてる」
「…そのマダムレッドって人は幸せですね。グレル先輩に何千年も想ってもらえて」
私も、きっとグレル先輩を何千年も想う。
今の関係を壊したくない臆病な私は多分ずっと言わないけど。
ずっと想われてるマダムレッドが羨ましくなった。