3年前の名前の誕生日。俺は、彼女の目の前で死んだ。死因は、交通事故による外傷性ショック死。朦朧とする意識の中、最後に聞こえたのは名前の叫ぶような声。誰かが呼んだ救急車で病院に搬送されたものの、目を覚ますことはなく、そのまま息を引き取った。

死んでも死にきれないとはまさにこのことで、人間、強い後悔が残れば成仏できないらしく、事故から今までの3年間、俺は名前に付いて回った。

毎日泣いて食事もロクに取らず、ただ1人であの部屋にいる名前は、正直見ていられなかった。抱き締めて涙を拭いてやりたいのに、俺の身体は彼女には見えていなくて、触れることすらも許されない。

彼女の周りを付いて回れば、当然今まで知らなかったことを知ることもできるわけで、弱っている名前に付け込もうと下心丸出しな奴らに、名前を渡してたまるかって思った。死んだって、名前は俺のもんだって思った。

だから、あの日に渡そうとしていた指輪が彼女の手に渡り左薬指に嵌められた時、ほっとした。散々考えたプロポーズの言葉は言えず仕舞いで終わってしまったけれど、それでもよかった。名前が俺を想い続けてくれていることが、ただ嬉しかった。

だけど、名前の親友が結婚式を挙げたあの日、いい加減、俺は彼女を解放してやらなければならないと思った。名前が望む幸せを、俺が叶えてあげることができないから。

与えられた時間は、1週間。名前の幸せのために俺ができることは、たった1つ。


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