王国の女王

「あの子、アラバスタ王国の女王だったの」
「ええ、そうみたい」
「そう…」
「サンジくんとウソップ、まだ寝てるのかしら」
「分からない。見てくる」
「ありがとうシナ」
「ナミは、あの2人の野暮な喧嘩止めてあげて」
「任せて」

随分とややこしいことに足を入れてしまったと思った。それでも出会ってしまったのは仕方が無いので、半ば諦めの気持ちを先行させながらサンジ達の元に進んでいく。歪な丸みを帯びた月。相変わらず大きいそれに目をやりながら、事態は大きく展開していく。





リトル・ガーデンを出た一味は、静かな海を渡っていくーーー

「エルバフ…懐かしかったわ」
「ん?知り合いだったのか?」
「昔の船にいたの。…元気にしてるかな」
「シナちゃんに心配されてるなんだァ、幸せな巨人だ」
「また変なことを言う」
「いやいや、本心だ…っ、!痛てえ!なんだ?!」
「…どけ。修行の邪魔だ」
「はああ!?邪魔はテメェだ!」

サンジとシナの並ぶ姿は傍から見ても雰囲気がよく、それがゾロはなんとなく面白くなかった。修行ついでに強引に二人を退けると、サンジがいつも通りに怒り出すので、もう見慣れたその現場をただ眺める。

「ゾロ、足の傷は?」
「ああシナのお陰で傷みはねぇ」
「そう。だからと言って無理しないでね」
「こんくらい平気だ」
「おまえ、!シナに手当してもらったのか?、」
「うーん…やはり管理する船医がいないと私の能力だけじゃ限度があるわ」
「ああ…そうだが?」
「…!ドヤるな!俺だって何度もしてもらってんだ!」
「うっせーな猿みたいに喚くんじゃねえよ」
「くっそが…!」

「…シナさんで争いが起きてます」
「ああ、あいつらは仕方ねえよ…」
「人気者なんですね」
「そういやあリトル・ガーデンでもどっちと狩り行くかで争ってたな…あんま関わんねえ方が身のためだ」

ミス・ウェンズデー改めビビ。先日のイガラッパの乗った船の爆発を見た彼女からは確かに強い執念を感じた。王国の女王、きっと色んなしがらみを越えて彼女は生きているのだろうか。こんなにも小さな身体に担う役目はきっと自分たちには想像しえないような苦悩なのだろうと、不憫にも思う。

「アラバスタ、」
「?シナさん」
「美しいところでしょう。あの街から感じる力は好きだったわ」
「アラバスタに訪れたことが?」
「ええ。随分前だけれど」

オアシスとはよく言ったものだと思った。白ひげと一緒にまわった国のことはどんな少ない時間だけだったとしてもよく覚えている。アラバスタはとても活気に溢れたいい街であった。

「・・・ナミ?」
「?!ナミさん、!」
「ひどい熱よ、」

ふと目を向けると、荒い呼吸を繰り返したナミがばたりと倒れた。触れた体が熱い。問いかけようにもナミの意識は朦朧としていて、ただ身体を支えることしか出来ない。

「このままじゃ、危ないわ・・・」
「そ、れじゃあナミさんは!、」
「とりあえず中に運びましょう。話はそれから」
「そうですね、」
「ナミ?!大丈夫なのか!」
「見ての通りよ。航海は少し待った方がいい」

仲間を失うことなど、海賊はざらにある。それでも1番失くせないものは仲間である。湿気る海の真ん中は、いつでも海賊を試している。












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