些細なおしゃべりで


 

紫髪が風に揺れる。
アメジストと出会ってから数日が経っていた。
クロエは研究のことしばし忘れてアメジストと話すことにしていた。


『グレ?』

『クロエに触らないでよ、ワタシだけのクロエよ』

「ブラッキー」

「クロエはポケモンの声が聞こえるの?」

「あぁ、ボクもマシロも聞こえるよ」


ブラッキーはクロエの足下についてまとわりついて離れようとしない。
クロエは白衣の襟をなおして微笑んだ。


「ボクも聞こえたらいいなぁ」

「聞こえない方がいいこともあるよ」

「え?」

「……ボクがしてきた研究は間違っているんだ」


クロエは本を開いた。
今まで調べたポケモンのことをまとめた本はクロエの愛読書だ。


「それって、アルジャーノンのこと?」

「あぁ、ボクのせいでアルジャーノンは耳が聞こえなくなって、目が見えなくなった」


ふわ、と吹いてきた風にクロエは本から顔を上げた。


「風が出てきたね、中に入ろう。リルベ地方の夜は冷えるんだ」


クロエは顔を上げて、微笑んだ。
それにつられてアメジストも微笑んだ。


「なんか、お兄ちゃんみたいだねクロエって」


 

- 1 -

*前次#


ページ:



ALICE+