あとがき





皆様、この度は『ねこじゃらしのワルツ』をご覧下さりありがとうございました!

コナツの初中編、いかがでしたでしょうか??

随分前に設定を考えていたのに、1年半もの間放ったらかしにされていた可哀想な作品です。
コナツファンの皆様、本当にごめんなさい。

何となくパソコンを漁っていたら出てきまして、「そういえば何かこんなの考えてたなぁ…」と思い出し、やっと始動させました。

本当は長編で第1部と第2部に分けるくらいの作品にする予定だったんですが、最初の設定とは大まかに変えてしまい、中編に収まりました。
やはり1年以上前に考えた作品は手直ししたいところがたくさんで(笑)

前の設定では、第1部で夢主が猫を拾って、二人で育てていくほのぼの〜な感じで、第2部ではその猫が死んでしまって、次の日起きたら猫になっていたという感じでした。

なのでこの作品は細かな設定こそ違えど、第2部のみを書いた感じですね。

題名も考えてあったので、そのまま使いました。

本当に猫の恩返しという設定だったんですが、何だか物足りない…という考えに至って、ヒュウガさんに至急応援してもらった次第です(笑)

皆様、ヒュウガの言動に何となくお気づきの方も多いと思います。


はて、何が??と思う方もいらっしゃるかなぁと思いますので、裏話も含めた『それから』をどうぞ♪










〜After that〜



「ねぇアヤたん。あだ名たんとコナツが見当たらないんだけど知らない?」


首を傾げながら参謀長官室にノックも無しに入ってきたヒュウガに、持っていたペンを投げつけたくなったが、そこまで短気になった覚えはない上にいつものことなので書類に視線を落としたまま「さっき中庭の方へ行くのを見かけたが。」と言うと、「へぇ。」とニマニマしだした。


「お熱いねぇ♪」


そう言いながら我が物顔でソファに座るヒュウガにはさすがにペンを投げつけた。


「何しにきた。早く書類を処理しろ。」

「んー。だってやる気起きないし☆」


ケラケラと笑うヒュウガに思い切り嘆息を吐き、机に肘をつくとその手を組んだ。


「ヒュウガ、いくつか質問する。」

「どーぞ♪」

「どんな方法で名前を猫にしたんだ。」


オブラートに包むのも面倒だったのでストレートに聞くと、ヒュウガはポカンと口を開けてマヌケ面でこちらを見てきた。


「…やっぱアヤたんにはバレてた?」


呆けた顔をしていたのに、すぐにケロリと笑うところが憎たらしい。
この事実を名前に言うつもりは全くないが、知ったらさぞ怒ることだろう。

あぁ、でも今は幸せの絶頂期だから逆に『ヒュウガ少佐のおかげですね!』だなんてポジティブに幸せオーラを振りまきながら笑うに違いない。

怒る名前も面倒臭いものがあるが、幸せオーラを振りまく名前もあしらうのが面倒だ。


「当たり前だ。こんなくだらないことをするやつは貴様しかいないだろう。」

「えーくだらなくないよ〜。」

「それにあの猫が名前だと私が気付いていたのもわかっていたな?」

「猫のあだ名たんに普通のご飯あげろって言った段階からね♪因みにオレの作戦はどこでバレた???」

「あの猫が名前だという段階で薄々わかっていた。名前を猫にしたがる人物なんて身近に一人だからな。」

「あは☆やっぱアヤたんは騙せなかったかぁ♪確信したのは?」

「名前が人間に戻って執務室に入ってきた時だな。あの時はまだあの猫が名前だとは誰も知らなかったはずなのに、お前は温い紅茶を手渡したあげく「戻ったんだ」と言っただろう?」

「まさか3日間の効き目があるっていうクスリが2日間とちょっとで切れるとは思わなくてね。もう〜細かいとこみてるなぁ〜♪キャッ、アヤたんってばそんなにいつもオレのこと見てくれてるの??」


名前も面倒だがあれにはまだ可愛さがあるから良しとしよう。
だがこいつにそんなものはないし求めてすらいない。

無言で鞭を取り出すと、さすがにマズイと思ったのかヒュウガはソファの上で体勢を整えた。


「監視カメラに細工をしたのもお前か。」

「もちろん♪3分の手際の良さ褒めて褒めて☆」

「あの時名前の部屋で何をしていた。」

「残業の時にカツラギさんが出した飲み物に、街の路地裏にいたお婆さんから買ったクスリを盛ったからそろそろ猫になってるかなぁと思って見に行くついでに首輪つけたんだ☆あだ名たんに似合うと思って♪」


何故そんな怪しそうな人間から、更に怪しげなクスリを買ったのか全くもって理解できない。


「クスリをもった意図は。」

「ん??そりゃぁあの2人がじれったいから☆両思いなのはみえみえなのに全然くっつかないんだもん。タイミングを与えたんだよ♪」


思っていた通りか。
ならやはり名前が言っていたニボシを与えた猫の呪いとか恩返しとかいうやつは、偶然が重なっただけだな。


「ねぇアヤたん。今回はあだ名たんが猫だったけど、本当はオレからしたらコナツが猫で、あだ名たんはねこじゃらしだと思うんだよね。」


つまりはそのねこじゃらし(コナツ)を手に取って猫(名前)で遊び、結果的には見て楽しんだというわけか。


「楽しかったか?」

「もちろん♪」


結果的にも良かったしね。とヒュウガがまたケラケラと笑ったのを視界に入れながら、非現実的な数日間だったな、と天を仰いで息を吐いた。







「確かここら辺だったと思うんですど…」


私は、私に呪いを掛けたあの猫が今も誰の目にも止まることなく死んでいるままなのはイヤで、人間に戻った今、埋めに行こうと思っていたらコナツさんもついてくると言ってくれたので二人で中庭に来ていた。


しかし猫の死骸は見当たらない。


「もしかして…ここじゃないですか?」


一緒に探していてくれたコナツさんが私を手招きして呼んでくれたので、私はコナツさんに駆け寄った。

そこの地面は最近掘り返したような跡があり、少しだけだけどこんもりと盛り上がっていた。


「誰かが埋めてくれたんでしょうね。」

「そうみたいですね。」


猫が死んでしまったことは寂しいけれど、それだけでも何だか嬉しかった。

死んでいた猫を埋めてくれた人がいることが。


私は少しだけ瞳を閉じてどうか天国にちゃんとたどり着けていますように、と祈りを込めた。


「戻りましょうか。」

「もういいんですか?」

「はい。」


私は踵を返して中庭を歩く。
その横にはコナツさんが朗らかに微笑んでいて、太陽の光がそんなコナツさんの髪の毛を照らしていて輝いて見えた。

少しだけ目を細めながら、思い出したように口を開く。


「そういえば、猫って結構不便でした。熱い紅茶は飲めないしご飯は食べにくいし。」

「…十分器用そうでしたよ?」


あの奇妙な光景を思い出したのか、コナツさんが苦笑した。


「そうですか?でもアヤナミ様があの猫が私だと気付いてくれたおかげでキャットフードじゃなくて助かりました。」


あの2択はいただけない。
2度と選択肢に入れたくない食事だ。

むしろ人間の食べ物ではない。


うんうんと一人で頷いていると、コナツさんがハタと歩みを止めた。


「…え?アヤナミ様は猫の正体に気付いていたんですか?!?!」

「はい。だからあの時カツラギ大佐のご飯を出すように言ってくれたんですよ。」

「……」


コナツさんは急に何を思ったのか、下を俯いた。

ハチミツ色の髪の毛が余計に眩しい。


「コナツさん?」

「……アヤナミ様は気付いたのに…。僕は気付いてあげられなかったなんて…」


嫉妬というよりは悔しがっているようにみえた。

その姿も声も全てが愛おしくて、私は小さく微笑んだ。


「コナツさん、私貴方のそういうところが大好きです。」


素直な貴方だから、私も素直に言葉に出すの。


「その真っ直ぐに悔やんだり、笑ったり、怒ったり。そして優しくしてくれる貴方が好きです。」


コナツさんは俯いたまま、器用に耳だけを赤くしてみせた。


「コナツさん、顔上げてください。私、キスしたいです。」


恥ずかしくないわけじゃない。
でも、何だか無性にしたくなったんだ。


コナツさんが少しずつ顔を上げると、私はそのまま彼の唇に唇を重ねた。
そしてその唇が離れた後は、今度は彼からキスが降ってきた。


「また、もし名前さんが猫になるようなことがあったら、今度は僕が真っ先に気付いてみせますから。」


ほら、貴方はいつでも真っ直ぐ。
その瞳も、笑顔も、そして優しさも。



―Eternal live happily―

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