たまこまA

「梓!?」
「はぁい、桐絵」
「なんでいるのよ!」
「桐絵に会いに来たの」
「えっ…ちょっと!それならそうって連絡してよ!」
「ご飯食べに来ただけだけど」
「騙したなー!」
「相変わらずちょろいな」

奥に入ってきた私を見つけて目を丸くして驚く桐絵をいつものように騙す。会う度にあり得ないだろうというような嘘をついているのに毎回毎回騙されてくれる桐絵はやっぱり相当頭が弱いと思う。戦闘面の勘は冴え渡っているのにこういうことに関する勘は全く冴えてない。

「お、梓だー。久しぶり」
「久しぶり〜この間はありがと〜助かっちゃった」
「全然!お安い御用よ〜」
「何?栞、何かしたの?」
「まぁね〜」
「服借りたの、お出かけ用の」
「服?言ってくれれば私だって貸したわよ!」
「その日は栞が持ってたやつがよかったの、また今度ね」
「まあ、いいけど…」

地下にでも行っていたのか、戻ってきた栞が私を見てひらひらと手を振る。栞や桐絵の洋服を借りるのは今に始まったことじゃなく、恒例行事なのだが桐絵は自分がいない時に私が玉狛に来たことが不満だったようで頬を膨らませていた。ごめんごめんと謝ればちょろい桐絵はすぐに許してくれる。

「ところで陽太郎さん?あなたの後輩とやらを紹介してくれますか?」
「うむ、いいだろう」
「いつからあんたの後輩になったのよ」
「まあまあ」
「こいつがわれらがたまこまだいにのりーだーだ!」
「こら、こいつって言わないの。こんにちは〜本部所属の湊川梓で〜す」
「玉狛第二の三雲修です…!よろしくお願いします…!」
「よろしくね〜」

先程からソファに座ってこちらの様子を窺っている子が三人。恐らくあの子たちが陽太郎が玄関で言っていた後輩だろう。ソファの三人を指さしながら陽太郎に視線を送れば待ってましたと言わんばかりに表情が明るくなる。眼鏡をかけた男の子を指さす陽太郎を咎めて名前を名乗れば慌てたように立ち上がって挨拶をしてくれる。もの凄く可愛い後輩の匂いがしてちょっとキュンとする。

「そしてこっちがたまこまだいにのえーすだ!」
「こっちって言わない」
「おぶっ」
「ごめんね〜君は何くん?」
「ゆうま、空閑遊真だよ。えーっと、よろしくお願いします、梓先輩」
「あー、先輩とか敬語とか好きじゃないからいいよ」
「そうか?じゃあ、遠慮なく」
「うんうん、よろしくね〜」

次に真っ白な髪の小さな男の子を指さす陽太郎を再度咎めてその子にもまた同じように自己紹介をする。緩い話し方のその子ももの凄く可愛い後輩の匂いがする。慣れないような口調で敬語を話す遊真に笑いながら無理しなくていいよと言えばあっさりとため口で話してくれる。

「そして、このこがおれのおよめさんこうほです」
「え、えと…雨取千佳です…!」
「ちっちゃい!可愛い!わー!よろしくねー!」
「よ、よろしくお願いします…!」
「陽太郎、可愛い子捕まえたねー!」
「ふっ、まあな」
「ドヤ顔ムカつくー!生意気ー!」
「行動と言動が一致してないんすけど」
「いやもう可愛くて」
「なんで真顔なんすか」

最後は小さな女の子。もうさっきから可愛いが止まらない。陽太郎がお嫁さん候補にしたがる気持ちが分かる気がする。頭を撫でながらよろしくねと言えば恥ずかしそうにはにかみながらよろしくお願いしますと言ってくれた。陽太郎も可愛いし新しくできた後輩も可愛いしで一周回って表情が消えた私に京介が冷静な顔でツッコミを入れた。

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