たまこまB

レイジさんお手製の夜ご飯を食べて、ソファに座りながらテレビを見る。膝には陽太郎、足元には雷神丸、両サイドには遊真と千佳という最高に可愛い布陣だ。幸せな気分に浸ったまま帰りたいところだが、生憎私にはこれからやらなければならないことがある。

「よーし、京介!10本勝負やるよ」
「いや、何でですか」
「蜂の巣にしてやるって言ったでしょ。ほら、さっさとする!」
「はぁ…わかりました」
「とりまるだけずるい!私も!」
「京介の後ね」

ここに来る前に京介に言った通り、私はこの男を宣言通り蜂の巣にしなくてはならないのだ。親指で行くぞとジェスチャーしながら部屋を出るとため息をつきながら京介が後ろをついてくる。更にその後ろから桐絵達もついてくる。この調子だとすぐには帰れなさそうだ。

「梓ちゃん、強いのか?」
「んー、弱くはないと思うよ?」
「何堂々と嘘ついてるんですか」
「人聞き悪いこと言わないでよ」
「梓の強さは見たらわかるわよ」
「ま、そゆこと〜」

戦闘を歩く私の隣に来た遊真が私を見上げる。その問いに曖昧に笑い返すと京介と桐絵が怪訝な顔をする。そこまで自分を強いと過剰評価するつもりはないからこその曖昧な返事だったのだけれど二人はお気に召さなかったようだ。

「はーっはっはっ!私に勝とうなんて百年早いのよ!」
「セリフが完全に悪役のソレなんですけど」
「なんとでも言え!」
「まぁ、2本取りましたけど」
「2本でしょ!2本!」
「次は私ね!」
「っしゃ、かかってこい!」

京介との模擬戦は8対2で私の勝ちだった。久しぶりに指導しながらの模擬戦で2戦落としてしまった。私から2本とれたのが嬉しいのか誇らしげな顔をする京介に苦笑いを返して私の前でトリガーを構える桐絵に向き直ってブースに入った。

「うぇーい!私の勝ちー!」
「悔しい!もう一回!」
「やーだ。また今度ね」
「勝ち逃げなんてずるい!」
「戦略的撤退と言って」
「こなみ先輩に7-3か。強いな、梓ちゃん」
「今日は調子良かったわ〜」
「きーっ!悔しいっ!」

京介と戦ったことでテンションが上がっていたのか、調子が出ていたのかは分からないが桐絵に勝ち越すことが出来た私は今なら何を言われても笑顔で許してやれる気がする。隣でもう一戦と騒ぐ桐絵を適当にあしらって時間を見ればもう22時近い時間になっていて驚いた。

「梓先輩、また強くなりました?」
「桐絵がサボってたんじゃない?」
「失礼ね!ちゃんとやってるわよ!」
「冗談だって。さーて、そろそろ帰るか」
「送りますよ」
「いいよいいよ、だいじょーぶ」
「送ってもらいなさいよ。一応、あんただって女子なんだから」
「今日は一人で歩きたい気分なの!」
「……分かりました。じゃあ本部についたら連絡してください」
「おっけいおっけい。じゃあね、また遊びに来ま〜す」

私を見て首を傾げる京介に笑って冗談で返せば桐絵が腰に手を当てて眉間に皺を寄せていた。送ると言ってくれた京介に断りの返事をして、見送ってくれる玉狛メンバーにひらひらと手を振って歩き始める。うん、久しぶりに楽しかった。やっぱり学校よりボーダーの方が居心地いいよなあ…早く卒業したい。ボーダーに永久就職したい、と心から思った一日だった。

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