「翔陽に連絡しないとなぁ…。えっと、仕事終わったよでいいか!」

そう呟くとポケットに入れていた携帯を取り出す。
とあるアプリを開いて「翔陽」と表示されている部分を押して、先ほど呟いたとおりに打ち込む。
待ち合わせ場所は駅でいいよね、とそれも合わせて打ち込んでおいた。

「よし!」

携帯をポケットにいれて、駅に向かって歩く。
ふと、見上げた空はいつの間にかオレンジ色になっていた。
今日は時間が経つの早いなー、そうぼんやり考える。
今まで1人で仕事をしていたので、誰かと一緒に依頼を解決したことはなかった。そのためか凄く新鮮な気分だった。
夜久さん優しかったな。今日手伝ってくれた彼を思い出す。
仕事帰りだと言っていたから、きっと疲れていたハズなのに手伝ってくれるなんて親切な人だな。

「また会いたいな」

ん?私今なんて言った…。
また会いたい?って…。
ま、まあそうだよね助けてもらったし、何かお礼をしないとだし!
そうだよ!そういうことだよね!!

「あー、いたいた!珀空」
ん?この声は……。
「あ、翔陽だ」
斜め下に向けていた視線をあげれば、駅の前に夕焼けに負けないくらい鮮やかなオレンジ色が見えた。
どうやら物思いに耽っているうちに、駅に着いてしまっていたらしい。
「ごめん、翔陽!待った?」
そう言って翔陽の方へと駆け寄る。
「いや!今来たばっかり!」
「そうなんだ。良かった!」

切符を買って、改札口を通る。
魔力で動いているらしい電子掲示板を見れば電車はあと数分で来ることが分かった。


「ギルドさ、どうだった??」
「……えっと」
初出勤?でいいのか、それがどうだったか気になり、聞けば何故か思いっきり目を逸らす翔陽。冷や汗も出ている。
「…前会ったことがある影山って奴がいて、……色々あってオッサンのズラ飛ばして、影山と言い合いになって外に出された」
「……え?」
いやいや、なんかツッコミどころ満載なんだけど。
その色々ってところを聞きたいし、オッサンのズラ飛ばしたって…え!?
「……へー、そうなんだ」
なんて返せばいいのか分からないので取り敢えずそう返す。
丁度良いタイミングで電車が来たのでそれに乗り込んだ。幸いにも電車の中は空いていて座ることができた。

「俺さ、明日から影山と魔法の練習するから6時前には家から走ってギルド行くな!!」
「えっ!?」
あれ、そのカゲヤマって人と喧嘩したみたいなこと言ってたのに、一緒に練習するの?
あと……!
いつも7時に翔陽に起こしてもらうのに、6時前に行くってことは、

「明日から私は母さんか夏に起こしてもらわないといけないってこと?」

いや、それは良いんだけどさ。
今までの習慣のせいか翔陽に起こしてもらうと結構目が覚めるの早いんだよね……。
「自分で起きろ!」
「やだ」
それだけは無理だと即答すれば、はぁとため息をつかれた。
「じゃあ5時に…」
「それもいや!」



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