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1人で過ごしていた私にいつもピーピー泣いてる男の子が私のことを『珍しい見た目だ』と言った、隣の男の子は博識で『”アルビノ”だから当たり前だろ』と言っていた。
泣き虫の子はその子のいうことが聞こえていないのか『この前本にマコそっくりなやつがいたんだよ。鳥のような羽が背中から生えててさ、黄色みたいな輝いてるのが頭のてっぺんに浮かんでたんだよ』と息巻いていた。『それって”テンシ”ってやつか?』と聞くと『よくわからないけど、たぶんそう!』と言った。

私は”アルビノ”も”テンシ”もよくわからないけれど2人のやり取りが面白くって笑みを零した。泣き虫の子は『今の顔すっごいそっくりだった!』と言い、3人で笑った。

初めて会ってからしばらく時間がたった名前だけの自己紹介もした、毎日のように遊んでいたと思う。2人と違って大人は私のことを見てひそひそと話し始める、何を話しているかわからないけれど居心地のとても悪い場所だった。でも2人と会うときはそんなこと忘れたくて無理して笑っていたかもしれない。

ある日大切な時間を邪魔する出来事があった。いつものように3人で談笑しているといつもこちらを睨んでくる男がやってきた、そして無理矢理私を担ぎ上げどこかへ向おうとした。2人は私を助けようとして足をけったりしていた、ぐるりと視界が変わったかと思ったら後ろから2人のうめき声と男の怒鳴り声がした、また視界が変わったかと思ったら顔から血を流す2人が見えた。必死に2人の名前を呼ぶが男に『黙ってろ!』と言われ恐怖のあまり黙ってしまった『お前が黙っていればあいつらには何もしねぇよ』幼いころの私は男が約束してくれると思っていた。

自分で自分の口を塞いで必死に嗚咽を飲み込んだ、涙で歪む視界には無名街の入り口が遠のいていくのが見えた。誰でもいい、助けて…。そう願った途端グイっと服を引っ張られたそして私を担ぎ上げていた男は殴り飛ばされていた。

「おいおい、どう見ても事案発生だろ。だめだろおっさん」

説教じみたことを言っているが殴られた男はピクリとも動かない。殴った男は『あれ?おーい』と男に話掛けるが気を失ったことに気付き『やっちまったなー』と言った後私を見た。

「お前どうしよ」
「た、たすけ…て」

うわごとのように『あそこには戻りたくない、いやだ』と言うと『一緒に来るか!そうしようぜ!』と言って男は私を抱っこした。担がれた時と違って不思議と安心感があった。

「−−い…おい。マコ。ぼーっとしてたけど大丈夫か?」
「あっ、うん!ちょっとウルフと出会ったときの思い出してただけ」
「なんだそりゃ。あれってたしか…10年前だったか?」
「うん」
「そんな前の事よく覚えてんな」
「私にとってとっても大切な思い出だから、忘れられないよ」

そっか、と言って2人で笑いあった。そういえば一緒にいてくれた2人ってなんて名前だっけ…忘れちゃったな