「それじゃあ頼む、日向によろしく言っといてくれ」
「ああ、任せろ」

赤い法被に赤い髪の男が運転する車に乗っていた麗依は悟りを開いていた。

「にしても、お前も馬鹿だなあ」
「煩い…そんなこと自分が一番よくわかってる」
「普通気づくだろ」
「もう黙れ……」

くっ、と笑いを堪えている加藤に叫びますたくなるのを堪えて自分の情けなさに落ち込み、未来を考えてなお落ち込む。

「言っておくが日向、呆れてたぞ」
「そう…」
「相手はぶっ殺すつもりみてぇだがな」
「幻滅された…馬鹿さに幻滅された…」
「おい聞いてんのか?……聞いてねぇな」

ぶつぶつと光がない目で力なく呟く麗依を横目に加藤はコブラから連絡をもらったときの日向を思い出した。
連絡もらった直後、加藤は車を出せと殺気まじりで指示されていた。怠そうな雰囲気はなりをひそめ、"祭り"中のような獣の日向だったがかかってきた電話によって一先ず収まった。日向がろくに説明しないため、詳しく話を聞いた右京から聞かされた事情に加藤は思わず笑った。
この程度で幻滅はしねぇと思うがなぁ…面白いから言わねぇけど








「クッ、さ、災難だったっ、なっ…ククッ」
「いっそのこと笑え…」
「姐さん!事情は聞きました!」
「ここなら安心安全ですよ!」
「なんせ頭がいますからね!」
「ゆっくり休んでください!」
「ベイビーズの気遣いが刺さる…」

真面目に心配し、励ましてくれるベイビーズに自分自身の至らなさを痛感した麗依だった。

「おい日向んとこ早く行け」
「……な、情けなさにき、嫌われたら……っ」
「んなことで日向が変わるわけねぇだろうが、とっとといけ」

嫌われたらどうしよう、と全身で不安を表す麗依を右京は引きずり一室に投げ込んだ。
部屋では煙管片手に日向が寛ぎ、投げ込まれた麗依を見ていた。

「……来い」

どうすればいいのかわからなくなっていた麗依はその言葉に顎で指し示された日向の前に座った。

「…間抜けだなァ」
「痛感してます……」