二等星が秋雨に墜ちた日



夜がにじむ頃、我が家の明かりが目に入りました。ぽたぽた、私の頬に雨粒が落ち始めました。私は駆け足で家のドアをくぐりました。
いつも通りの日でした。少し疲れているくらいで、本当に、いつも通りでした。
全てがいつも通りのはずだったのに、どうして、それだけが違ったんでしょうか。
昨晩もこの腕に抱き上げて、この体を折り曲げて、その小さな温もりを包み込んでいたのに。丸い瞳も、手触りの悪いやんちゃな毛並みも、小さな、小さな体も。たしかにそこにあったのに。
その日は、かすかに雨が降っていました。秋のにじむ、少し肌寒い朝でした。
私は、その日のことを、これから一生、死ぬまで忘れはしないでしょう。



2017/10/12
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