「あ、」
次の週のレッスン、いつもとなにも変わらず長椅子で休憩してると、先週全く口を開いていなかった、すばるくんがいた。
向こうも気づいたみたいだし、挨拶だけしといたほうがいいかな。
「こんにちわ、、」
「ああ、おお、、」
そういうと長椅子の少し先にある自販機に向かって行った。
すばるくんも、やっぱりよく思ってへんのかな。
「あれ?またおるやん、」
「なんなん、まだおるん?」
すばるくんの方を見てると反対側から私を罵る声が聞こえた。
多分先週は、休んでたから何も言ってこなかっただけで毎週のように私に何かを言ってくる人達だろう。
「どうせ女ひとりじゃデビューも出来んて」
「諦めて他の事務所入れや」
「ここは女がおるべき場所ちゃうねん」
「………、」
「なんか言えや、コラ!!!」
やばい、殴られる。
「ったあ、なにしてんねんお前ら」
「え、すばるくん、、?」
なんでか私の前にすばるくんが立ってて、痛みが私になかったってことは多分すばるくんが庇ってくれたんやろう。
「え、大丈夫ですか?」
「大丈夫ちゃうよ、ホンマになにこれ、なんで俺殴られてるん」
「それは、すばるくんが」
「なんやお前俺には言い返せるんか!」
「あ、あの、すいません!!」
「ほんまやで、女の子に手は出したらあかんで」
「「すいませんでした!」」
「ええから、もうはよ行き」
そう言われると逃げるようにして男の子たちはレッスン場に戻って行った。
「………、大丈夫?」
「いや、大丈夫ですか?」
「なんか見えとったから、一応年下の女の子やし」
そういうと照れ臭くなったのか片手で口を押さえ出した。
初めて、この事務所で私を普通に見てくれてる人がいる。
そう感じるとなんでか心が楽になって、涙が止まらなくなった。
「な、!どうした、!?」
「っ……ぅ゛、っ……、、」
目の前ですばるくんが困ってるのは分かってたけど涙が止まらなかった。
ずっと前でオロオロしながら、ど、どした?って顔を覗き込んでくるこの人に私は多分救われた。
「おいすばるおっそいぞ!!なにしてんねんほんま!!」
「ちょ!ヒナ!!助けてくれ!!!」
「あ、お前!なに泣かしてんねん!!」「ちゃうって!俺助けてんて!」
向こうから遅いすばるくんを心配して村上くんまでやってきた。
すばる君が必死に弁解してるのが面白くて、やっと涙が止まった。
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