すっと上げられたトスを目にも留まらぬ速さで相手コートへ叩き落す、バンッと体育館に響き渡るこの音も、観客の湧き上がる声も全てが体をびりびりと痺れさせた
中学3年生の夏、自身の部活動が幕を閉じ暇を持て余していた時に友達に連れて行かれたのがその試合だった。自分と同じ中学生が戦っている。バレーなんて授業でやるだけでそんなに興味もなかったのに、目の前に広がる白熱した試合に魅せられた
(すごい......)
初めて見たその試合は今でもずっと記憶に残っている
あの時の試合に魅せられて進学先ではバレー部のマネージャーを志望した。今から私自身がバレーを始めたとしても、良い結果が出るとは思えなかった。それよりも間近でより迫力のある刺激的な試合を求めて、男子バレー部へマネージャーとしての入部を決めた
「よろしくお願いします!」
なんて初々しく発した挨拶から気がつけばもう1年経っていた
「みょうじ」
(あれから1年か...早いなあ...)
「ねえ聞こえてる?」
(後輩どのくらい入ってくるかな)
「...みょうじなまえさん」
「うぇ!?え、はい!」
考え事をしているとどうやら呼ばれていたようだ。声のする方を見上げればそこには呆れた表情をした赤葦がいた
「な、何?」
「みょうじぼーっとしすぎ」
「ごめん赤葦!ちょっと考え事してて...」
「別にいいけど、席替えもう始まってるから早く横に移動して」
そうだ、今は席替えをくじ引きで決めてたんだ。私の席はそう変わらず、1番後ろの列で横にひとつ移動するだけだった...ということは
「赤葦が隣なんだ」
「うん、この席良いね」
「赤葦背が高いから後ろの人気にしなくていいしよかったね」
「まあそれ以外にも、だけど」
それ以外って?と聞いても別に、とはぐらかされてしまった。1年の時と変わらずよくわからない奴だと思う。それでも私は...
(赤葦が隣でよかった)
と心の中で思っていた
2016.03.02
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