あと40分くらいで1日目の練習が終わる、そんなときに例の烏野の2人は現れたらしい。というのも、私は夕食の用意で体育館から外れていてその試合を見れなかったからだ


「どんな子だったの?」

「ほら、あそこにいる黒髪とオレンジの2人。影山と日向っていうんだけど人間技じゃなかった」

「ぶっ...なにそれ」

「見たらわかるよ」


夕食を京治の隣で食べながら2人の様子を聞いてみる。真面目な顔をして人間技じゃないなんて言うのだから思わずお茶を吹いてしまいそうになったがなんとか堪えた


「そんなに気になるの?」

「うん、梟谷に良い刺激になる選手かなって」

「なまえって意外と向上心の塊だね...」

「自主練見に行ってみようかなぁ」

「ダメ」


食い気味に止めた京治の方を見ると、少しだけムスッとしていた


「ずっと音駒にいたんだから自主練くらい俺のこと見てて」


ガヤガヤとした食堂の中で京治の声だけが耳に入り込んできて、ぶわっと身体の熱をあげた。少し嫉妬してくれているのかもしれない、それが堪らなく嬉しい。けれどなんて答えれば良いのかわからずあわあわとしていると、その様子に満足したのか京治はニヤリと笑って


「俺、なまえのことになると嫉妬深くなるみたい。覚悟しててね」


内緒話をするように耳元でこっそりと、私にしか聞こえないけれどはっきりと、京治の低い声が頭に響いた

顔を赤くしたまま固まっている私を他所に京治はごちそうさま、と先に食器を片付けに行ってしまった。ずるずると赤い顔を隠すように机に突っ伏すると、近くから「なに、赤葦にでも虐められたか?」なんて黒尾さんが声をかけてくる


「なんでもないです...」

「なんでもないって顔してねぇダロ。真っ赤だぜ?」

「ほっといてください〜〜」

「つれないねぇなまえちゃん」


いつまでも揶揄ってくる黒尾さんを適当に受け流して私も食器を片付ける。まだまだ食事している人も多く、皿洗いは後回しにした方が良さそうだ。それまでの間京治のところで見学でもしていよう


私だって少しでも多く京治と一緒にいたいからね




2016.04.05