※虐め・暴力表現有り 注意



「みょうじさんさぁ、及川さんの何なの?」


こんな風に虐めがあることは徹の過去の彼女を見ていてわかっていた。いつか呼び出されることも覚悟していたしそれに屈するつもりもなかった


「彼女だよ」


はっきりと目の前にいる3〜4人のグループを見つめて言うと、激昂したように手に持っていたポーチのようなものを投げつけられた


「いっ....た、何するの」

「それはこっちのセリフよ!なんであんたみたいな子が及川さんと付き合ってるのよ!」

「ぜんっぜん釣り合ってないし」

「及川さんに迷惑なのよ、早く別れてよ」


バカバカしい言葉の羅列にため息をつきたくなった。言いたいだけ吐き捨ててスッキリしたのだろうか、彼女たちは屋上から去っていった。ここで反抗したことが良くなかったのか、呼び出しや虐めはどんどんエスカレートしていく


「なまえっ...見ちゃだめっ」


朝下駄箱からの異臭、使い物にならなくなったスリッパを美月ちゃんが片付けようとしていた


「美月ちゃん、そんなの触らなくていいよ。捨てよう」

「なまえ...このこと及川は...」

「前の彼女もされてたみたいだから徹は知ってると思う。でもこれは私の問題だから」


私が我慢すればいいのなら。バレーに打ち込む徹の邪魔にならないのなら、こんなこと何ともない。見えない場所に増える傷や痣も気にしない。それは徹の好きなものが、私にとっても大切だから、守らなければならないから。


「うっ...ぐ、......っは」

「いい加減別れたらどうなの?」

「ねえ倒れてないで何か言いなよ〜」

「もう死んじゃうんじゃない?」

「あはははは!!!」


何度聞いても聞きなれない下品な笑い声が耳につく。脳裏に真剣にバレーへと打ち込み、試合に勝って笑う徹の姿が浮かんだ


こんなの、ただの独り善がりな感情だということは誰よりも自分がよく知っていた




2016.05.05