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意地を張らなくなった途端、真尋くんは急速に僕に馴染んだ。

そして避けていたんだから当たり前だけど、僕は彼のことを全く知らなかったことに気付く。

例えば、理由は知らないけれど彼も近藤さんが大好きで。
僕が近藤さんの話をすると必ず目の色を変えて、食い付いてくる。

土方さんに関しては、あの人が来る度によく話しているみたいだけど、いつも何か余計な一言で怒られている。
…親近感が沸いてくるのは言うまでもなく。
悪戯が好きなようにも見えるので、今度誘ってみようとも思う。

あとは、どうやら彼は記憶力が良いらしい。
前に近藤さんから愛読書「三國志」を借りたらしく、暇を見つけては読んでいた。
すると二、三日後には近藤さんとかなり語れるところまで知識をつけていた。


そして――いつも笑顔で常に周りを見ていて…何とか壁を作ろうとしている、とか。

そう思ったきっかけは彼の丁寧な喋り方。
最初は「そういう子なのかな」と思ったけど、どうやら違うらしい。
時々…主にびっくりした時なんかは普通の……年相応なものになる。
それに気付けば、彼の笑顔はどこか一歩引いたもので、必死に何かを取り繕う様に見える。

そんな中で僕はふとした時に彼の「素」に触れてしまった。
それから僕の中の真尋くんは「そう」見えるようになった。

折角仲良くなれると思ったのに。
これでは、形は違えど立場が逆転しただけだ。
でも、それを怒れる程僕は彼を知らない。

だから。
僕はこんな質問をした。

「真尋くんさ、何で敬語使ってるの?素はそうじゃないよね?なんで…外側にいようとするの?」

内側に――来てよ。

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