守るために



「おはようございます!沖田くん!」
「おはよう。今日も早いね」

あれから数日。
前なら冷たく返されただけのこの挨拶も今では――

「そんなに早いならついでに僕も起こしてくれたら良いのに」
「んー…気が向いたら起こしますよ」

笑顔でこんな会話も出来る。
今までを思えば、考えられない状況だ。
沖田くんとの距離が日に日に縮まっていく様に思えて、私は嬉しかった。
仕事も以前は別れて取り組んでいたが、今は二人一緒にこなしている。
二人で行動する時間が格段に増えた。
ちなみに先日の手合わせの件は、お互いの怪我が治るまでお預けとなった。

そんな中で、彼について分かったことがいくつかある。

まず、とにかく近藤さんが好きということ。

「…でね、この時の近藤さんは本当に強かったんだ!一人で五人相手してさ!」
「うわぁ…近藤さんすごい!」
「うん!近藤さんに勝てる人なんて江戸にいるかなぁ……」

近藤さんの話をする時の彼は、本当に生き生きとしている。
普段は大人びた印象の彼だが、この時ばかりは年相応の笑顔を見せる。

次に、土方さんには厳しいこと。

「近藤さ…何だ、土方さんだけですか」
「……俺だけで悪いか」
「悪いですよ。僕は近藤さんに、会いに来たのに」

近藤さんに、とそこだけを強調するのがいかにも彼らしい。
そんな彼に土方さんは思いっ切り眉間に皺を寄せた。
…皺が寄っても美形なのは素直に凄いと思う。


性格的な面で言えば、彼は人をからかうのが大好きということ。

「…ね?お願い」
「嫌ですよ!何で一人でこの大量の汗臭い道着を洗わないといけないんですか!」
「へ〜、そんな事言っていいんだ?」
「な、何ですかその笑みは」
「ならこの前土方さんに『顔は良くても子供心が分かってない人でなし』なんて事言ってたの言っちゃうよ?」
「っ!!何でその事を!?」

折角隣町に行ったのに、何もお土産をくれなかった時だ!

「あれ、本当に言ったんだ」
「〜〜〜沖田くん!!」

私が愕然とすれば、沖田くんは腹を抱え笑いだす。
その笑顔は本当に楽しそうで、こちらは怒るに怒れない。


そして彼は洞察力に優れ……実はものすごく優しい。

「これ持つよ」

そう言って沖田くんは洗濯物の入った籠を持ってくれる。

「大丈夫です!持てます!」
「だーめ。君まだ腕痛そうだもん」
「それは…!」

確かに転けた時に打ち付けた腕がまだ痛む時があった。
勿論それを口に出したことも表に出したことも無い。
それでも分かってしまう彼は、そのまま何食わぬ顔で前を歩く。


……そんな。
そんな彼にだからこそ。
こんな質問をされてしまったんだと思う。


「真尋くんさ、何で敬語使ってるの?素はそうじゃないよね?なんで…外側にいようとするの?」


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