照れ屋な彼女とモデルの彼
「ねえ、」
「なんスか?」
「手、はなして」
私の言葉にこの男、黄瀬涼太は笑って「いやっス」と返してくる。今の私の体勢はというと、黄瀬涼太がかく胡座の足の間に座らされているというもので。それも自宅ならまだしも、学校でコイツは躊躇なくこう言うことをするのだから堪らない。
「ねえ!黄瀬!」
「てかいっつも思うんスけど」
黄瀬涼太の顔が私に近づく。女よりも綺麗な顔立ちが段々と、私の顔に近づいてくる。は?と思うと同時に、恥ずかしさからぎゅ、と目をつぶる私に、黄瀬涼太はくすくすと笑った。
「その照れやすいのなんとかなんないっスかねー可愛いんスけど。いくら学校だからって黄瀬って呼ばれるのは正直好きじゃないっス」
ほら、と黄瀬涼太は笑って細めていた目を開き、私を見る。
いつもの優しい視線じゃなく、威圧感すら感じるその目。そんなの。
「…っ、涼」
「お前ら、いい加減にしろ!!授業始まるぞ!黄瀬!出てけ!さっさと教室もどれ!」
照れ屋な彼女とモデルの彼。
(えーいやっス)
(りょ、黄瀬!)
(よし、次の授業サボろ!いくっスよ名前!)
(え、や、きゃああ!)
(てめえら…いい加減にしろ!!)