歪んだ愛情
オレの恋人の名前はヴァリアーのメイドとして働いている。コロコロと変わる表情は毎日見てても飽きないし、柔らかい声は殺伐とした暗殺部隊の中で唯一オレを癒してくれる。
勿論、オレがそう感じるのだから他の幹部も同じ感情を抱くらしく、それなりに重宝されていて可愛がられている。それが気に入らないことはあるが、まあそれくらい目を瞑ってやろうと思う王子はかなり優しい。




「嫌い」

そう言う名前はきっと自分の表情がわかってない。泣くまいと必死に堪えるその顔にオレの中の加虐性が顔を出す。

「あっそ」
「っ、大嫌いだもん」

また泣きそうな顔。そんな顔をしながら、どうしてそんなことを言うのかといえば、簡単に言えば虐め。幹部クラスに可愛がられている名前は他のメイドに目をつけられている。
が、オレがそれを知らないわけがない。虐めの原因になり得る奴は片っ端からブチ殺してきた。

「ふうん、じゃ別れる?」

目を見開いて、ついに涙を流し出す名前の顔に、背筋を伝っていく感覚はどうしようもないほどの優越感と快感。

「や、だぁ!」

いい年して泣きじゃくるその姿は、オレを支配する。もっとオレだけを必要として。もっとオレに染まって。

「ししし、名前は馬鹿だな」
「だっ、て、」

そういって抱き締めるオレに名前は安心したように泣き顔を笑顔に変えていく。柔らかな髪の上から頭を撫でれば、名前はぎゅっとオレに抱きつく力を強くする。

「なんで、嫌いなんていったの?」

優しく聞けばその細い首を振る姿に、名前から見えないオレの口は弧を描く。優しい名前はオレの性格を知って、虐めのことを絶対に口にしない。

「そっ。じゃあいいから部屋いこ」
「ん…ベル、すき大好き」

そう言う名前を抱き着かせたまま、抱き上げれば、さらさらと揺れる髪から香る匂いがオレを煽る。ベッドの上でどうやってなかせてやろうか、そう思っていれば名前を憎々しげに睨んでいるメイドが1人。オレに気付いて駆け寄ってこようとする姿にナイフを一投すれば、オレの思考にはもう名前の事だけだった。



虐めの首謀者
(オレだけを必要とするように)
katharsis