実らない恋
「今思い出しても笑えるぜぇ!!」
スクアーロさんの言葉に、ベルはうっせとそっぽを向く。
資料提出のためにヴァリアーにお邪魔すれば、どうやらベルは私との馴れ初めを問い詰められていたらしい。
「センパイべたぼれじゃないですかー」
「黙れカエル。手出したら殺すぞ」
投げるナイフはフラン君の頭のカエルに突き刺さる。これももう慣れた風景だ。
ボンゴレがマフィアだと知ったのはベルが寿司やに入ってきた後。
ボムを投げ始めた獄寺に、その導火線を瞬く間にベルはナイフで切り落とす。唖然とする私を他所に、みんなはそんなことよりもどうしてベルがここにいるのかの方が重要だったらしい。しかしそれも剛さんの一言で収まることになる。
『お?外人のボウズじゃねーか!またナイフさばき見せてくれよ!!』
そういうとタコを投げる剛さん。顔を青く染める沢田綱吉の心配をよそに、ベルはザクザクザクとタコを切り刻んだ。
『ししし』
『流石だな!上達したんじゃねーか?』
『ったりまえ。だってオレ王子だもん』
ああ彼だ、と思った瞬間。
「抱きつかれたのはビビったけどな。殺しそうになった」
「っちょっとベル」
「あら!情熱的ね名前ちゃん!」
うふふふとわらうルッスーリアさんは楽しそうだ。彼女に初めて会ったときは手紙返しちゃってごめんなさいね、と謝られた。ルッスーリアさんが謝ることないのに、優しい人だ。
「つーかベルお前なにかってに俺の名前使ってんだぁ!」
「べっつにー」
「ベルの名前、スクアーロさんって呼んだらみんなにすごい顔されましたね」
あの時の寿司や内のみんなの微妙な顔と、ベルの顔と言ったら…忘れようにも忘れられない。ふふふと思わず笑えば、ベルが此方を軽く睨む。
「かっちーん」
「え」
瞬く間にベルの手が膝の下に滑り込み、気付けば横抱きにされる。
「え、ちょ」
「ちょっと王子の愛がどこまで深いか教えてやんねーと」
「センパイ任務なんで、ほどほどにお願いしまーす」
「お熱いわねえ」
「まあいいんじゃねーか?名前、小僧には連絡しとくぞぉ」
部屋を出ていくベルを止める人はいないらしい。
「べる!まだお昼だよ!」
「ししし♪にがさねーよ」
耳元でつぶやかれれば、顔にかあっと熱が集まる。ほんと、惚れたら負けだ。ベルの肩に頭を預けて私はあきらめたのだった。
実らない恋?ありえない。end.
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切なく終われなかった。