にくいなんて褒め言葉
マーモンとの仕事は私が主に働くことになる。基本的に作戦はマーモンが立てる。私は彼の人形のように、その計画に一寸たりとも狂わずに動くだけ。効率の良さが重要らしい。
「マーモンさんのたてる計画は、えげつないですね」
「そうかい?」
血塗れになったその体で、マーモンの幻覚に苦しむ標的は一体どんなものを見ているのだろうか。
大切な家族が殺されるところ?友人が自分を殺そうとしているところ?はたまた、両親を自分が殺すところだろうか。
幼い体を持ちながら、彼の思考はずいぶん大人びている。それでも彼が普通の人間と違うのはそんなところではない。
「憎まれますね。この仕事は」
「それがどうかしたかい?」
事切れる直前、死ぬ間際に見せた標的の此方をみる暗い瞳。それは言葉を発さなくとも、私達を恨むという意思が現れていた。
仕事を終えて、部下が来るまでの短い間。マーモンは適当な話に付き合ってくれる。それは雑談だったり、次の標的の話だったりはするけれど。
「憎みは復讐を呼び、復讐は暗殺を呼ぶ。そして暗殺は金になる」
今日はどうやら、彼の価値観を知れたらしい。
だから構わないさ、とつまらなそうに呟く彼に「そうですか」と返した。
彼との仕事では報告書は分担になる。まとめて出すのはマーモンがやってくれるので、私は自室に戻るとシャワーを浴びる暇もなく報告書を仕上げることとなる。
「名前は仕事が速くて助かるよ」
抑揚のない声でそういうマーモンは、もちろん既に自分の報告書を完成させている。私分の報告書を受け取れば、彼は宙に浮いてボスの元に向かうのだ。
これで私はようやくシャワーを浴びることができる。シャワーを浴びれば、あの恨みのこもった暗い瞳は今まで殺してきた奴等と混ざり合って忘れてしまうのだけれど。
悪役に徹せよ
彼が暗殺部隊にいる理由は、金のため。