Chapter2 〜天賦〜





朝食の後、白哉と共に六番隊の隊主室に来ると、赤い髪を束ねた変な眉の男が居た。


「おはようございます、朽木隊長。…と、誰っスか?」


「…私は瑞稀玲。おはよ、阿散井副隊長」


「何で俺の事…つか、副隊長って分かっててその口調かよ…」


「白哉と普通に話すのに、副隊長には敬語が要るの?」


問うと、彼の顔が真っ青になった。


「…なっ…お前!選りに選って朽木隊長を…」


「構わぬ。私が許した。仕事に戻れ、恋次」


掴みかからんばかりに迫る彼を、白哉が制する。


「許したって…」


信じられない物を見るような目を向けられて、私は苦笑する。


「朝ね…「玲。余計な事は言うな」


阿散井の耳元で呼び捨て迄の過程を小声で話そうとするも、気付いた彼に止められる。

反応速度を見るに、余程話されたくないらしい。


「…はぁい」


大人しく白哉の元に近寄ると、彼は執務机の前に座った。


「恋次。茶でも淹れて来てやれ」


「は?いや、此処に茶なんてありましたっけ?」


「…そう言えば此処で茶など飲んだ事も無かったな」


偶に抜けている白哉が可愛いと思うのは私だけなんだろうか。

阿散井君はなんか唖然としてる。


「あ、じゃあ私買ってこよっか?」


彼等は仕事があるけれど、私は何処にも属していない。

つまり暇人ってことで。


「…其方一人で行かせるわけにはいかぬ」


そう言えば白哉は一応お目付役なんだった。

私が信用に足ると総隊長が認めるまで。

でもそれじゃどちらかを煩わせる事になる訳で。

私にお茶を出すのにわざわざ買い物に付き合わせるのも申し訳なさすぎる。


「う〜ん…あ、じゃあ冬獅郎の所から貰ってくる。それなら、外には出ないし問題ないよね?」


「…そういう意味では無いのだが…」


「…?どういう意味?」


お目付任務なのに、一人で動くのが駄目なのか。

隊舎の中なら、他の死神だっているだろうし、大丈夫そうなものだけど。


「…隊長、もしかして心配なんスか?」


「………私は仕事に戻れと言わなかったか?」


不意に何かを思い付いた様に問う恋次に、白哉は絶対零度の視線を向ける。


「いや、その後茶がどうのって……っすみませんでしたぁ!」


ごうっと噴き出す殺気に恋次は即座に謝って、机の筆を取り上げた。


「…玲。此処へ」


素直に白哉の側へ行くと、小さな声で耳打ちされる。


「絶対に、知らない死神に着いて行くな。何かあれば霊圧を揺らせ」


「…うん、分かった」


何と無く、心配されている事は分かって、笑みを浮かべる。


「すぐ、戻ってくるね」


そう彼に告げて隊主室を出た。


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