Chapter3 〜特別〜





屋敷で着物に着替えさせてもらって、街に出た後、どうやら私ははしゃぎ過ぎたらしい。

今は何時の間にか逸れてしまった白哉の霊圧を探っていた。

けれど、知らない気配を複数感じて、目を開く。

そこには、知らない男の人が三人。

私を囲むように立っていた。


「姉ちゃん今一人か?」


「お前恐ろしく美人だな」


「俺らと良いことしねぇかぁ?」


黙って目を見ると、何処と無く濁った瞳。

合わせていたくなくて、目を逸らすと、ぱしっと右腕を掴まれて。


「そんな素っ気ない顔すんなよ」


「優しくしてやるから」


近付いてくる彼らに、吐き気がした。

違う。

彼等とは、違う。

触れた手から感じる温もりも、合わせた瞳から感じる暖かさも。

何がこんなにも違う?

分からない。


「破道の一、衝」


不意に聞こえた言霊が、霊圧が酷く恋しくなって、吹き飛ばされた男達を振り返りもせずに飛び付いた。


「玲…」


「ごめんなさい。ありがと」


するりと髪を撫でてくれる手に安堵する。

膝をついて合わせられる漆黒の瞳に心が温かくなった。


「どうした?あの程度の輩に押し負けたか?」


心配そうに揺れる瞳。

それは私の弱さを責める色では無くて。

けれど、首を振る。

霊力も持たない魂魄に、押し負ける訳がない。

動けなかったのは、余りに違い過ぎる温度に困惑したからで。

触れられただけで吐き気を訴える自分の身体に混乱したからで。

一言、言霊を呟けば、弾き飛ばせたはずなのに。

それが出来なかったのは、何が違うのか、見極めたかったからで。

でも、もう分かった。

何がじゃない。

全てが違う。

瞳に宿る穏やかさも、触れる手の優しさも。

凪ぐように穏やかな霊圧も、奥に隠された感情も。


「ごめんね、あの人達に手を掴まれて、吐き気がした。びっくりしたの。目も合わせられなくて、気持ち悪くて。
でも、何で白哉や冬獅郎は平気なんだろって、考えてて」


「…そうか。少し休むか」


優しく髪を撫でてくれる手はやっぱり暖かくて。

頷くと、彼は近くの甘味処でゆっくり話を聞いてくれた。

こんな話、怒ったって不思議じゃないのに。

あんな奴らと一緒にするなって、声を荒げたって普通なのに。

彼はどうしてか酷く優しい瞳をして、私の話を聞いていた。

まだ、あの感情は分からないけれど。

一つ、分かったことがある。

彼等は私の中で、特別な存在なんだってこと。


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