Chapter3 〜特別〜





私は言葉を選びながら話した。

調停者の在り方、異質過ぎる斬魄刀。

そして、冬獅郎と白哉の霊圧の変化について。


「…創造と破壊…成る程の。封じられるはずじゃ。して、其方の言葉をそのまま受け取るならば、ここに居る隊長達の霊圧を上げることも可能という事か?」


「魂魄は無意識に、自身や周囲に影響が及ばない様、それぞれの判断で霊圧を制限しています。
それを取り払う事が可能というだけで、私が霊力を譲渡する訳ではありません」


説明を補足すると、元柳斎は難しい顔をした。


「それは魂魄に悪影響は及ばぬのか」


「もう少し詳しく話すなら、十番隊隊長と六番隊隊長の制限を外す際、自滅にならぬ様、魂魄の補強はしています。普通に外すだけでは、塵になりますから」


もっと言えば、彼等の時は直接触れて霊力を同調させ、上がり幅を抑える事で、その後の負担も大分軽減させている。

けれど、それを全員に出来るほど、私は体力は無いから敢えて言わない。

成る程の、と頷いた総隊長が真剣そのものの瞳で私を見た。


「それを、ここに居る隊長達に施してはくれるか?」


その言葉に、冬獅郎が声を上げる。

恐らく彼は、私に負担がかかる事を知っているんだろう。

あの後、書類整理だけ終わらせて寝ちゃってたし。

くすりと小さく私は笑う。

残念ながら、私はそこまで優しくはない。


「構いませんよ?その後一週間、意識が戻らない可能性を考慮して尚、それでも良いと仰るのなら」


その言葉に、総隊長の眉が寄る。


「…十番隊隊長と六番隊隊長は意識を失ってなどおらぬがの」


「あくまで可能性です。他の隊長さん達に、彼等と同等の霊圧制御能力があるのなら…意識を保てるかもしれませんね」


これは嘘だけど。

多分完璧に制御しても三日は意識飛ばすけど。

それは言わない。

私だって寝込みたくないもの。


「…ならばまず私が。総隊長、宜しいですか?」


声をあげたのは砕蜂だった。

…やっぱり彼女だけ手を出そう。

知ってる人なら同調させても嫌悪はないし。

うん、なんならこれが一番重要だったりする。


「…良いじゃろう。瑞稀、頼んだぞ」


「分かりました」


告げて後ろを振り返ると、冬獅郎の心配そうな表情と、白哉が小さく溜息を吐くのが見えた。

お人好し、とか思われてるんだろうな。

なんて思いつつ、隊主室に結界を張って。

砕蜂に視線を向ける。


「じゃあ砕蜂。目、閉じて?」


素直に目を閉じる砕蜂の額に指を当てる。

魂魄を補強し、霊力を軽く同調させてから、無意識下の制限を破壊した。

瞬間跳ね上がる霊圧を、同調させた霊力で怪しまれない程度に安定させる。

けれど、身体への負担は少しづつ引き上げた前の二人の比ではない。


「かっは…はっ…はっ」


自身の霊圧に充てられて、がくりと膝を着き、軽い呼吸困難に陥っている彼女の肩を叩いて引き戻す。


「砕蜂。落ち着いて?この力は貴女の力。集中すれば、制御出来るの」


この声が届いているのかは分からない。

瞳は虚ろで、光は見えなかった。

やっぱり、駄目か。

冬獅郎、いきなり術解いてもなんとかしてたんだけどな。

なんて思いつつ、取り敢えず自分の霊圧を上げて反鬼相殺の要領で霊力をぶつけて削っていく。

序でに天照の癒しの光を直接送って、恐慌状態から引き戻し、再び声をかけた。


「砕蜂!聞こえる?」


「はっ…く…あぁ…」


「結界は張ってるから瞬閧でも卍解でもいい!兎に角霊力削って自分で制御なさい!」


途端、彼女の霊圧が雷の様に変化する。


「ちょ、待て。結界って何処に…」


「あ、他の人、自分でどうにかしてね」


「待てぇ!」


冷静さの欠片も残っていない砕蜂に、そんな言葉が届くはずもなく。

カッと爆発でもする様に、放たれた膨大な量の雷は、隊主室内を蹂躙した。



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