Chapter4 〜華奢〜





ふと目を覚ますと、日が傾き、空が茜に染まる頃だった。

身体を起こして周りを見渡すと、此方に気付いた翡翠の瞳と目が合う。

その目が、何処と無く面倒くさそうに、別の方向を向いた…と思ったら横から伸びてきた腕に捕らわれた。


「玲〜、やっと起きたのね?もうすぐ定時よ!ねぇ、今日は私と飲みに行かない?」


ぎゅうぎゅう抱き締められながら、そんな勧誘を受けて、ちらりと冬獅郎を見遣る。

予想通り、彼の瞳は否を示して。


「松本…。飲みたいなら何時もの連中誘え。玲が酒なんて飲めるわけ無いだろうが」


冬獅郎の言葉で乱菊の顔が不服そうに歪む。


「え〜?玲、飲めないの?」


凄く残念そうに、物凄く悲しそうに、銀灰色の瞳が揺れる。

頷こうとしていた私は、その乱菊の誘惑に負けた。


「お酒って美味しい?」


彼女に手を伸ばしながら問うと、


「うん!美味しい美味しい〜!でも玲の方が美味しそうっ」


彼女から凄まじい色香が発せられて。

伸ばした手を握られて、どさりと長椅子に戻される。

そのまま乱菊に覆い被さられた所で、室温ががくりと下がった。

少し肌寒いくらいの温度から、凍り付きそうなほどの氷点下に。


「松本…」


低い声の方に無理矢理視線を向けると、冬獅郎の周りがピシピシと凍り始めていた。

因みに氷輪丸は抜かれていない。

やっぱり常時開放型に変異したみたいだ。


「や、やだなぁ、隊長。冗談ですよ、冗談!ね?玲、なんとか言って〜」


乱菊が割と本気で焦っている事を声音で読み取り、私は押し倒された身体を起こす。


「冬獅郎?なんで怒ってるの?」


出てくるのは疑問の言葉だけれど。


「…なんでって……あぁ」


何かを言い返そうとした彼が、何かを勝手に理解して、大きな溜息を吐いた。

それと同時に、怒気に反応していた冷気も霧散する。

気疲れしたように椅子に座ると冬獅郎に首を傾げながら。


「ん〜と…、冬獅郎も行く?」

私の中で既に決定事項と化した飲み会に、彼も誘ってみると。

暫く何かを考える様な素振りを見せていた冬獅郎は渋々といった感じで頷いた。

その様子を見ていた乱菊が、冬獅郎に見えないようにガッツポーズをしていた。

乱菊、冬獅郎と飲みたかったのかな。

そんな風に思ってくすと笑うと


「あ、玲。今何か勘違いしてるでしょ?」


そんな風に詰め寄られて。


「冬獅郎と飲みたかったのかなって。あ、私邪魔だったら白哉のとこ…「「違うわよ(だろ)」」


言いかけた言葉を全力否定された。


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