Chapter5 〜遊戯〜





「お爺ちゃ〜ん!」


そんな風に叫びながら飛び込んだ一番隊の隊主室で、入るなり拳骨を貰いそうになって、すかさず避ける。


「誰がお爺ちゃんじゃ!総隊長と呼ばんか、この小娘が!」


「じゃあ山爺?」


「おぬしにそんな呼ばれ方をする謂れは無いわ!」


余程気に入らなかったのか、声を荒げる元流斎に、話にならないと踏んだ私は大人しく呼び方を改める。


「ん、じゃあ総隊長。十一番隊の隊長さんと鬼事中なんだけど、追い付かれたら反撃するから宜しくね」


「そうなった経緯を説明せんか…」


疲れたのか、呆れたのか、溜息を付かんばかりの山本に、経緯を説明すると、やはりというか大きな溜息を吐かれた。


「まぁ良い。それで更木が懲りればの。じゃがお主、死神になったとは言え、まだ護廷十三隊に所属しておらぬじゃろう」


「私は何処にも所属しないよ?」


「何を言うか!お主を野放しになど出来るはずがなかろう!」


「えぇ〜〜」


私の不満の声に、総隊長はまた溜息を吐く。


「何処の隊でも良い。希望は聞こう。じゃからさっさと所属を決めよ」


そんなことを言われても。

私は誰かの下に付くには目立ち過ぎるし、力もあり過ぎる。

それは自分で分かってる。

だからと言って何処かの隊長になんてなるつもりもなくて。

つまり、今まで通り、何処にも所属せず、自由に何処にでも行けて、誰とでも普通に話せる立場が良くて。


「じゃあ、ついでだから鬼事しよ」


虚をつかれたような顔をする元流斎に、畳み掛ける。


「私は捕まえられた隊の人の下に付く。逆に捕まらなければ無所属を許してもらう。
斬魄刀でも、鬼道でも、なんでも使って良いよ。私も反撃はするけれど。どう?」


「それは、護廷十三隊全てを敵にしても逃げ切る自信があっての事か」


「勿論」


これだけ挑発すれば伝わったはずだ。

私が誰の下にも付く気が無いことも。

自分を捕まえられるくらい強い死神にしか従わないと暗に言っていることも。


「良かろう。ならばこれより半刻後、精霊廷内全ての死神がお主を敵と見做す。
時刻は未の終刻(午後三時)まで。それまで逃げ切る事が出来たなら、お主の待遇は今まで通り、無所属と認めよう」


「言ったね?総隊長。取消は聞かないよ?」


「無論!お主こそ、後悔するで無いぞ」


こうして、壮大な鬼ごっこの火蓋が切って落とされた。

今は巳の初刻。つまり午前九時。

半刻後、つまり一時間後に始まる鬼事の前に、約五時間は敵対する冬獅郎と白哉に先に報告だけしとこう。

じゃなきゃ後で雷落ちる。

絶対に。


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