パリッとした憧れの制服に身を包み、期待を胸に学校へ向かう足取りは軽く、我ながら単純だなぁと思いながら、これから何度も見るであろう景色の中を駆け抜ける。

立派な校門を潜り合格通知に書かれていた1-Aの教室を目指す。

「大きい!」

見つけた扉は想像以上に大きかった。一呼吸置いて扉を開いた。
既にほとんどの生徒が席についていた。
黒板に書いてある自分の名前を見つけ、指定された席へと向かう。
その途中、机に足をかけた如何にも不良ですと言った男の子と眼鏡をした如何にも真面目ですと言った男の子が言い合いをしていた。巻き込まれないように、そーっと隣をすり抜け席につく。

「初めまして。蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」
「初めまして!私は八卦気子。私も名前で呼んでもらっていいよ〜」

周りの子たちと挨拶を交わしていると「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」という厳しい言葉が聞こえた。
扉の前には寝袋にすっぽり入って栄養ゼリーをヂュッ!!と一気に飲み干す男の人がいた。

「ハイ。静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね。
担任の相澤消太だ。よろしくね」

なんと担任の先生でした。

「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」


指示に従い、体操服を着てグラウンドへ出る、ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横飛び、上体起こし、長座体前屈を個性を使って測る個性把握テストを行うようだ。
そして担任の相澤先生の口からは無情にもトータル成績最下位だったものは見込み無しと判断され除籍処分という、入学初日にして大試練を与えられたのである。

そして第一種目から測定が始まった。



突然だが、わたしの個性は気を操るである。
自分の気を他人に分けることにより、自己治癒能力が促進され多少の怪我を治すことが出来る。もちろん攻撃も出来、掌に気を集中させれば威力は落ちるが範囲の広い気を放てる。反対に指1本のみに集中すれば範囲は狭いが威力の強い気が放てる。
何が言いたいかというと…

「(この個性、体力テストに全く向いてないんだけど!!!!)」

ということである。
みんな自分の個性を最大限に発揮させ、普通では考えられないような好記録を打ち立てている。
あ、個性向いてない仲間かもと思った緑谷くんもボール投げで好記録を出していた。人差し指を腫らしているのを見ると個性のコントロールがうまく出来ていないのか、そーいう使い勝手の悪い個性なのか。

途中、また不良のような男の子爆豪くんがブチ切れ、相澤先生に止められるというハプニングもあったが競技は続き、あっという間に全種目が終了した。
結果から言うとわたしは17位タイ。上体起こしと長座体前屈で最下位を免れれた。
ちなみに除籍処分は相澤先生曰く「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」であったようで、安堵したのは言うまでもない。

そして初日終了の下校時間。

「気子ちゃん。一緒に帰りましょう」
「梅雨ちゃん!うん帰ろう!」
「私もお邪魔していい〜?」
「芦戸さん!いいよいいよ、一緒に帰ろう」
「三奈でいいよ!八卦さんと蛙吹さん!」
「わたしも気子でいいよ!」
「梅雨ちゃんと呼んで」

さっそく出来たお友達。梅雨ちゃんと三奈ちゃんと、出身中学はどこだとかどんな個性だとは、クラスメイトがどんなだとか色々な話をしながら岐路についた。


入学早々、自分の力のなさとクラスメイト達との実力の差を痛感し少し落ち込んだりしたが、まだまだ入学初日。
こうしてわたしは、憧れのヒーローへの第一歩を踏み出した。

ALICE+